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短編2
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私は毎晩決まって同じ夢を見ていた。

海で溺れる夢だ。

最後には体が動かなくなり、底知れぬ闇に沈んで行く。

夢から覚めるまで意識はあるが、夢の途中で自分が事切れるのがわかる。

「あ、今死んだ」

と感じる瞬間があるのだ。

しかし、起きたあとの気分は悪くない。

私は毎朝、新しく生まれ変わったような、すがすがしい気分と共に目覚めるのだ。

だが、自分が死ぬ夢を毎晩見るのだ。

悪い予感がしなくもない。

そう考えていたある日、駅前で夢占いなるものをしている老婆を見かけた。

胡散臭さが前面に出てはいるが、妙に説得力のあるいでたちをしていた。

私は例の夢を話し、相談してみた。

老婆はただ一言、

「前世の記憶だよ」

なるほど、あたりさわりのない答えだ。

前世など確かめようがない、インチキには持ってこいの言い訳だ。

私はこれ以上話しても無駄だと思い、無言で代金を置くと、足早にその場を後にした。

そんな出来事も忘れかけていた頃、私は仕事を終え、歩いて自宅を目指していた。

人通りのない路地に入った瞬間、不意に後頭部に鈍痛を覚えた。

「お前が悪いんだからな…」

という声を聞いたと同時に意識を失っていた私が、目を覚ました時に見た光景は、見覚えのあるものだった。

雲一つない月夜。

眼前に広がる、水平線。

あの夢と全く同じだ。

何故、自分がこんな目にとは思わない。

私も、まっとうな人生を歩んで来たほうではない。

恨みなど人一倍買っていただろう。

「あのババァめ…やっぱりインチキじゃねぇか。前世の記憶なんかじゃない。予知夢だったのか。」

そんなことを呟きながら、夜空を見上げ、死を受け入れようとしていた。

夢と全く同じなのだ、助かることはないだろう。

そう考えながら、いつも自分の死を悟る瞬間に近づいて行く。

しかし、私はその時気付いた。

「今日は満月か…。」

夢ではいつも三日月だった。

「ははは…なんだ、あれはただの夢だったのか。予知夢ですらなかったようだ。」

死を目前にした私にはどうでも良い事だった。

程なくして、私はその生涯を閉じた。

一人の男が姿を消した数十年後。

ある占い師の老婆が一人の客に話していた。

「また会ったね。それは前世の記憶だよ。」

それを聞いた客は、納得のいかない顔をし、代金を無言で置くと、足早に去ってて行った。

老婆はそれを無表情に見送ると、一人で呟いた。

「次に会うのはいつだろうねぇ…。」

長文、駄文失礼しました。

怖い話投稿:ホラーテラー ひろしさん  

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