短編2
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鳥居

ずいぶん前の話になりますが、以前勤めていた千葉県内の会社に入社した年のある日のこと。

その日は新人同期での飲み会があり、最寄りの駅に着いたのは夜11時をまわった頃。

私は同期のTと会社の独身寮まで、人家の少ない真っ暗な道のりをバカ話をしながら歩いていました。

その道の最中、交差点の手前にあるに普段から何故か気になっていた鳥居があったんです。

一見、何の変哲もない小さな神社のようなのですが、前を通るたび、いつも何かに睨み付けられているような感覚に襲われるのです。

しかし、その日は酔っていた事もあり特に何も感じないまま、交差点の赤信号でTと二人で待っていました。

異変を感じたのはその直後でした。

私は自分の背中の鳥居のあたりに、何かの「気配」を感じたのです。

気にはなったんですが、何だか見てはいけないような気がして振り向けずにいると「気配」は徐々に私の方に近づいて来るのがわかりました。

信号が変わったら、すぐに歩きだそうと思ったのですが、なぜか、信号がなかなか変わりません。

信号を無視して歩こうかとも思ったのですが、Tの手前、不審に思われてはいけないと思いそのままガマンすることにしたのです。

しかし「気配」はじりじりと私の背後に迫ってきます。

そして、その「気配」はついに私の背中のあたりでぴたりと止まりました。

すると、さっきまでしゃべり続けていたTが、いきなり黙り込んだのです。

「おい・・・」

ようやくTが私に話しかけました。

「今、おまえの背中にさぁ・・・」

「ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

私は情けないくらいの叫び声を出して、Tを残して信号も無視して、駆け出しました。

気が付くとなぜかTも私と並んで全力疾走していました。

そのまま寮に着き、ようやく落ち着いてからTから聞いた話は以下のようでした。

Tは信号待ちをしていた時に鳥居から出てきた「モノ」が、私の背中に取り憑こうとしていたので、あわてて声を掛けたそうです。

私は、それは幽霊のようなものなのか?と聞いたのですが、

「違う、そんな生やさしいものじゃない。」

「じゃあ、何だったの?」

すると、Tは見た事も無いような沈んだ表情で

「お前は知らない方がいい。」

と、言ったきり黙ってしまいました。

その後、私もTもその会社を辞め、今は連絡がつかなくなってしまいましたが、あの時、私の背後に迫っていたものが何だったのか、未だに気になります。もし、あの時Tが声を掛けてくれなかったらどうなっていたのかと思うと、今でもゾッとします。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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