短編1
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臨死体験

これは祖父から聞いた話です。

戦時中、どこの国だったかは忘れましたが、海外に出兵していた祖父は、敵の銃弾を腹に受け、意識を失ったそうです。

祖父はその意識を失っている間に夢を見たそうです。

目の前に川があり、向こう岸では戦友が笑顔で手をふっている。

よく聞くあのシチュエーションです。

祖父も例外なく、川を渡ろうとしました。

その瞬間、背後から

「川を渡ってはだめだ!」

という声が聞こえたそうです。

振り返ると、そこにはもう一人の戦友が厳しい顔をして立っていました。

「危なかった、これが俗に言う三途の川か…助かった」

と思い、背後にいた戦友の元へ歩き出した瞬間、祖父は気付いたそうです。

「こいつはもう死んだはずだ…」

そう思った祖父は向こう岸を見ました。

向こう岸にはまだ生きている戦友が手を振り続けています。

祖父は夢中で川まで走り、飛び込み、がむしゃらに泳ぎました。

しかし、中々向こう岸には着かず、途中でまた意識を失ったそうです。

次に目覚めると、そこは軍の仮治療施設のような所でした。

そこで聞いたのは、向こう岸にいた戦友も祖父と共に銃弾を受け、二時間程前に亡くなったという事でした。

怖い話投稿:ホラーテラー よしきさん  

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