これは祖父から聞いた話です。
戦時中、どこの国だったかは忘れましたが、海外に出兵していた祖父は、敵の銃弾を腹に受け、意識を失ったそうです。
祖父はその意識を失っている間に夢を見たそうです。
目の前に川があり、向こう岸では戦友が笑顔で手をふっている。
よく聞くあのシチュエーションです。
祖父も例外なく、川を渡ろうとしました。
その瞬間、背後から
「川を渡ってはだめだ!」
という声が聞こえたそうです。
振り返ると、そこにはもう一人の戦友が厳しい顔をして立っていました。
「危なかった、これが俗に言う三途の川か…助かった」
と思い、背後にいた戦友の元へ歩き出した瞬間、祖父は気付いたそうです。
「こいつはもう死んだはずだ…」
そう思った祖父は向こう岸を見ました。
向こう岸にはまだ生きている戦友が手を振り続けています。
祖父は夢中で川まで走り、飛び込み、がむしゃらに泳ぎました。
しかし、中々向こう岸には着かず、途中でまた意識を失ったそうです。
次に目覚めると、そこは軍の仮治療施設のような所でした。
そこで聞いたのは、向こう岸にいた戦友も祖父と共に銃弾を受け、二時間程前に亡くなったという事でした。
怖い話投稿:ホラーテラー よしきさん
作者怖話