私が子供の時の話です。幽霊とかの話ではないので、怖くなかったらすみません。
私は小学生の頃、周りが山に囲まれた自然以外には何もないようなところに住んでいました。
そんな田舎では子供はゲームなどせず、いつも川で遊んだり走り回って遊んでいました。
夏になるとみんなこぞって山へ出かけ、その帰り道決まって寄る場所がありました。氷を売る氷屋です。
今でもはっきり覚えていますが、トタンで出来た屋根に黒ずんだ木でできたおじさんとおばさん二人のお店で、
店の前を通るとよく氷を切っているのでひんやりとした空気が体全体に当たって気持ちよかった場所でした。
いつも二人は私たちにかき氷を作ってくれる優しい人たちでした。
ある日いつものように氷屋に寄ると、その日は店が閉まっていました。
今までずっと通っていましたが閉まっているのは初めて見たので、友達に
「珍しいなぁ何処かに行ってるんだね」と言って帰ろうとすると、
氷を切っている機械の音がしたので出かけてるわけじゃないんだと思いましたが、
開いていないものは開いていないのでその日はみんなで家に帰りました。
その次の日、遊んだ帰りによるといつものように店は開いていて、かき氷を作ってくれました。
でもいつもいるおばさんが見当たりませんでした。
おじさんに
「おばさんはどうしたの?」
と聞くと
「用事があって出かけてるんだ」
と言っていたので、私たちはなんとも思っていなかったのですが、
二週間しても姿が見えなかったのでどこいったんだろ?と思っていました。
もうすぐ夏休みが終わる8月の下旬、
家の冷蔵庫が壊れてしまったのでおつかいを頼まれて初めて氷屋に氷を買いに行きました。
いつも通っていたのですが氷屋にお金を払うのは初めてでした。
やっぱりおばさんはいませんでしたが、
「おじさーん、氷ちょうだーい」
と言うと
大きな入れ物に長方形の透き通った綺麗な氷を入れてくれました。
「おつかいか、偉いねぇ」
と言って、アイスをくれたので上機嫌で帰路につきました。
しかし帰ってからおかしなことに気づきました。
玄関で氷を箱から出して母に渡そうとした時、氷の表面に赤黒い粒みたいなのが付いていました。
私はかき氷のイチゴのシロップだと思いなめましたが、イチゴシロップだと思っていたものは苦い別の何かでした。
でも何かわからず気にしていなかったのですが、それよりも氷の中に髪の毛が数本入っていたのには少し嫌な感じがしました。
私はそれを母に言う
「汚いねー、せっかく買ってきてくれたけどやめましょうか。」
と言って捨てました。
せっかく買ったのにと私は少々むすっとしましたが、
不気味だったのでしょうがないと思いました。
次の日私は別の県にいる祖父母の家に行く前に氷屋に寄って、
おじさんに氷に髪の毛が入っていたこと、赤黒い粒みたいなのが付いていたことを言うと、
おじさんは息を荒くし、目を見開き、今までに見せたことのない表情で私を睨んだので怖かったのですが、
私は気づいたのです。おじさんは頭を剃っていたので
髪の毛がなかったことに。
そのことに気づいた時私の全身の毛穴が開き、汗が噴き出しました。
きっと私の顔が急にこわばったのに気づいたのか、
急に私の肩を掴み、これほどにない無表情で
「私ちゃん、面白いものを見せてあげる」
と言って無理やり店の中に連れ込まれそうになりました。
でもただ事ではないと思った私は手を振りほどき、全力で走り急いで逃げるように祖父母の家に向かいました。
私は夜も眠れないほどほど怯えてしまい、全然楽しむことができませんでした。
母におじさんの変貌を話したのですが普段とても温和なおじさんがそんな風になるわけないと信じてくれませんでしたが、
あまりの怯えように母も心配してくれました。
3日後家に帰ろうとすると、
氷屋にたくさんの人だかりができ、警察官まで来ていたので嫌な予感がしました。
囲んでいた1人のおばさんに話を聞くと私はその場で吐いてしまいました。
おばさんによると
私が走って逃げたその夜、
夜中に目を覚ましトイレに行こうとした隣人のおばさんが、隣の氷屋に電気が付いているのを見た時、
氷を切る台の上で大きな肉塊を切っているのを見たらしかった。
その肉塊は牛でも豚でもない太腿のようなもの、
腕のようなものもあり、人間じゃないのかと怖くなったらしい。
さらに氷屋のおばさんを見なくなったことも結びつき、警察に相談。
そして夜中に見回っていた警察官に山奥に死体を遺棄しようとしていたところを捕まったらしいのです。
その死体は私たちが珍しく思った店が閉じられていた時に切断され、
そして氷に入っていた髪の毛はおばさんのもので
私がなめたイチゴのシロップだと思っていた赤黒い粒はおばさんの血だったのです。
きっと私がおじさんがおばさんを殺したことに気づいた思って中に連れ込んで口封じに殺そうとしたんだと思います。
私が逃げたあと、せめて死体は隠さないとと急いで捨てに行こうと思ったんだと思います。
もし私が逃げ切れずにに店の中に連れ込まれていたらと思うと…
あれから、もう20年以上経ちますが今でも氷を口にできません。
氷に何か付いていたらくちにしないほうがいいかもしれないですね。
shake
作者かとうはるみ
当時新聞にも乗った、自分が経験した中で一番怖かった話です。