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中編3
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白い蛇

かなり昔に聞いた話しです。

ある所に、母親と1歳2ヶ月になる男の子が二人で暮らしていた。

子供が一人で遊んでいる隙に、母親は洗濯物を取り入れる事にした。

空は急に暗黒に染まり、今にも雨が降り出しそうな気配に包まれていた。

洗濯物を腕に抱え子供の居る部屋を通り過ぎ様とした時、母親は何かにとても違和感を感じた。

部屋を覗き込んだ母親は、何やら白い紐の様な物を手に、無邪気に遊ぶ我が子を暫く見つめていたのだが、良く見ると、子供が持っていた物は白い紐では無く白い蛇だった。

子供は「キャッ、キャッ」と言いながらその蛇を振り回し遊んでいたが、あまりにも驚いた母親の叫ぶ声に子供は白い蛇を持つ手を放し泣き出した。

白い蛇は僅かに開いていた部屋の戸から外へと消え去った。

その日の夜、子供は高熱を出し、慌てた母親は病院へと急いだ。

しかし、風邪でも無く薬も効かずで母親は途方に暮れ泣き続けた。

ふと、母親は隣の村にとても高貴な和尚がいる事を思い出し、藁をも掴む思いで子供を抱きしめ寺へと向かった。

その寺は本堂に行くまでに百段の階段を登らなければならなかった。

母親は一刻も早く和尚に助けて頂こうと、必死に階段をかけ上った。

八分目まで来た時に母親は何気なく上の本堂のある方を見上げた。

すると、そこには腕をくみ仁王立ちでこちらを見下ろす和尚がいた。

階段を上りきった母親に和尚は「そろそろ来る頃だと思っていました。さあ、中へ」

思いがけない和尚の言葉に身震いしながらも、和尚に導かれ本堂の中へ入って行った。

和尚は早速お経を念じ、そして子供の手のひらに経文らしきものを書き、何があっても家に着くまではこの手を開かぬ様にと強く母親に言いつけ、明日の朝日が昇るまでの間、部屋の戸に必ずこのお札を貼る様にと4枚のお札を手渡した。

寺を出て暫くすると、ポツリ、ポツリと雨が降り出した。やがて雨は本降りとなり、母親は子供の手をしっかりと握りしめ、家に向かう足取りをはやめた。

ようやく家に着いた母親は部屋に入り、和尚から言われた通りに子供の手を握りしめながら、まず東の戸を締め一枚目のお札を貼った。

と、その時慌てていたせいか母親は足をもつらせ、その場に倒れ込んでしまった。

一瞬の出来事だった。子供をかばおうとした母親は、咄嗟に子供の手を握っていた手を放し床についたその時、手を開いた子供は和尚が書いた手のひらの経文を唱え始めた。

異様な光景だった。カッと目を見開きお経を唱える我が子の姿に、母親は言葉を失って立ちすくんだ。

と、次の瞬間、お札を貼れずにいた3方の戸が次々に音をたてて閉じた。

我に返った母親は必死に閉まった戸を開けようとしたが、どうしても開ける事が出来なかった。

お経を唱える我が子の、子供の物とは思えぬ低く響きわたる声が、しばし部屋中にこだました。

無我夢中で最後の戸に手を掛けた時、少しではあるが開いたのだ。それはお札を貼った東の戸だった。

しかし、どうしてもそれ以上は開く事が出来なかった母親は、絶望のあまりうなだれたその時、母親は我が子ではあるが、決して我が子では無いそれが、こちらを不気味な笑みを浮かべ、“逃がすものか”とでも言うかのように、その戸を押さえる姿を目にした。

母親の頬を一筋の涙が流れ落ちた。もう体からは気力も体力も失われていた。

母親は膝をつき、そっと我が子を抱きしめた。

このままこの子と共に、この場で朽ちてしまおうと意を決した時、東の空から朝日が昇り、闇に包まれていた部屋が徐々に光に照らされた。

どれくらい時が流れただろう。

母親は我が子を抱きながら、そっと戸を開けた。

いつの間にか空は晴れ渡り、何事も無かったかの様な朝の風景に、母親は“終わったんだ…”と感じた。

ふと見上げた空に、母親は見たのだった。

ゆっくりと天へと昇る一匹の白い蛇を。

母親にはこの日の出来事の意味が理解出来なかったが、腕の中で無邪気に笑う我が子の顔を見て、強く抱きしめ涙を流した。

長文をお許し下さい。

怖い話投稿:ホラーテラー 田んぼでマンボさん  

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