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中編5
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狙われた兄

俺自身は全く霊感がないんで実際に見たり、感じたりした事はない。

俺には7歳上の兄と、6歳上の姉がいるんだが

この兄が霊感?というか何というか

とにかく、よく狙われるんです。

俺の実家は、信号も近くになければ

コンビニまで車で30分はかかる。

夏になると夜7時以降は虫たちが鳴きたい放題鳴きまくるような田舎。(そんな田舎が大好きなんだけど)

都会は分からないけど、田舎っていうのは各家ごとに、専属?の坊さんがいるんだ。

その坊さんは町内に3人ほどいて、定期的に担当の家を回ってお経あげたり、世間話したりしながら地域住民からも絶対的な信頼関係を結ぶんだ。

当然 俺の家にも担当の坊さんがいるんだけど

この人はかなり霊力?があるみたいで

いつも俺たちの身近に起きた事をズバリ当ててくる。

俺がまだ5歳くらいだった頃、じいちゃんの膝の上に乗ってテレビ見てたんだ。

当時、小学生だった兄は夏休み真っ只中。

兄は自他共に認めるほどのガキ大将。

そんな兄も、さすがに毎日遊び回って疲れたのか、その日は珍しく家に居て、

自分の部屋にいた。

部屋は兄と姉の共同スペースになっていて、2段ベットで寝てた。

俺は歳が離れてるせいで、この部屋はほとんど使った事がない。

部屋には、ばあちゃんの形見である、フランス人形が置いてある。

姉はいつも大事そうにフランス人形を可愛がってた。

姉は遊びに行ってて、部屋には兄だけ。

俺は兄と遊びたくて部屋を覗いてみた。

遊んでくれるといっても俺が付きまとうか、プロレス技キメられて俺がいつも泣いて終了。

その日は珍しく兄はフランス人形を取り出して来た。

何するのかワクワクしながら待ってると

兄はクレヨンを手に取り、人形の顔に落書きし始めた。

綺麗な顔した人形が酷い顔に…。

興味が無い俺は、部屋を出て再びじいちゃんの膝の上へ。

そのまま1時間くらいテレビを見て。

じいちゃんが遊び相手になって、俺と遊んでくれてたんだか

いきなり俺は、兄の部屋に行きたくなった。

行きたいというか、呼ばれた気がした。

兄の部屋からじいちゃんの部屋までは

結構な距離があるため、声なんて絶対に聞こえないんだけどね。

とにかく急がないとまたプロレスでシゴかれる…と思い、半泣き状態で兄が待つ部屋へと急いだ。

半泣きで兄の部屋に着いた俺。

勢いよくドアを開けた。

2段ベットの1段目、仰向けで眠る兄の姿があった。

何かが違う。

走ってきたせいで息切れした俺。

落ち着いて、兄をもう一度見た。

仰向けで寝てる兄、

しかし顔だけは俺を見ていた。

泣きながら。物凄い形相で俺を睨みつけていた。

訳が分からず、視線を外せない俺。

シッコ漏らしそうなくらいビビっていた。

『来るのが遅えぇぞ』

兄は叫びながら俺の元に駆け寄ってきた。そして泣きながら、何か硬い物体で俺を殴った。

泣き出す俺。

泣きながら叫ぶ兄。

何が何だか分からずに泣いていると、兄が俺の手をとり、じいちゃんの部屋に走り出した。

2人の孫が泣きながら部屋に入ってくる。

じいちゃんは、驚いた顔で俺ら兄弟を膝の上に乗せて、優しくなだめてくれた。

落ち着きを取り戻した兄は、何があったのか話し始めた。

兄『寝てたら金縛りにあった。声も出ない。でも目だけは動いた。しばらくキョロキョロしてると、いきなり足が痛くなった。何かが足に乗っかってる感じ。』

俺『?』

兄『そしたら痛みがだんだん上に上がってきたんだ。ズシッズシッて。あ~ぁ弟が乗っかって来て、悪戯してるんだなと思った。』

俺←必死で否定する。(もしそうなら捕まって、何倍もの仕返しがくる)

兄『ああ、分かってるお前じゃなかった。』

兄『足→腹→胸の順で苦しくなってきたんで、胸の辺りを目だけを動かして覗いたんだ。

そこには小さい手があった。そして俺の胸をよじ登ってきたんだ。あいつが』

俺『?』

兄『人形だよ。』

兄『凄く笑ってた。笑いながら俺の首まで登ってきやがった。すっげぇ苦しくて怖かった。声出ねぇけど必死でじいちゃんと〇〇←(俺)を呼んだ。そしたらいきなりお前が来て、人形も消えてしまった。』

じいちゃんにお菓子貰って、ニコニコしながら話す兄。

俺はまた何か違和感を感じた。

俺が兄の部屋に入ってから感じた違和感。

その意味がやっと分かった。

兄は男だから一緒に寝るはずないんだ。

それなのに一緒に寝てたんだ。

人形と。

しかも頭が無い人形。

頭はどこにあるのか?

じいちゃんの部屋でくつろぐ兄を見て、更に驚いた。

あの人形の顔を握りしめてる兄。

兄の部屋で殴られた時に感じた、硬い物の正体だ。

あんな物で殴りやがってと

文句を言いかけた俺。

しかしじいちゃんが俺を止めた

なんでじいちゃん、俺を止めるんだ?

じ『坊さん呼んだから黙ってまってろ』

じいちゃんは俺達兄弟に内緒で、家担当の坊さんを呼んでいたらしい。

何も知らず、人形の頭を握りしめながらお菓子を食う兄。

のんきなヤローだ。

しかし何で人形の頭握りしめてるんだ?

チャイムも押さずに坊さんが家に入ってきた。(田舎じゃ他人の家も自宅と同じ)

坊『A!←兄』

坊さんは家に来て何も話さずにただ兄を呼んだ。そして塩?みたいな白い粉を兄にぶっかけた。

その時、兄はいきなりその場に倒れ込んだ。

俺は突然の出来事にただ呆然としていた。坊さんはお経みたいな言葉をただひたすらしゃべり続けていた。

しばらくすると兄の様子が変わった。

兄は、倒れ込んだまま、泣きはじめた。

そういえば変だ。

怖い思いをしたのに

何故?笑いながらお菓子を食べながら

じいちゃんと俺に話していたんだ?

その疑問は、坊さんが答えてくれた。

坊『話しをしていたのはAではない。ばあちゃんだ。Aは普段から人形にひどいことをして遊んでいただろ?それで怒った人形がAの元に現れて、怨みを晴らしに来てしまった。弟が来たからAは助かった。だか弟を呼んだのは兄では無く、ばあちゃんだ。可愛いがっていた人形が可愛い孫を傷つける事が嫌だったんだろう。そして無事に助けた孫の安否をじいちゃんに話して聞かせるためにAにのりうつり、話し始めたんじゃ。』

じいちゃんは途中から気付いたみたいだ。兄の顔がだんだんとばあちゃんそっくりになったらしい。だから俺が兄に話そうとした時に俺を止めたみたいだ。

俺『結局、人形はどうなったの?』

坊『Aが握っている人形の顔を見てみろ』

人形の顔をみて俺は言葉が出なかった。

無表情で落書きだらけの顔が

明らかに怒って睨みつけていたんだ。

坊『普通に戻す事は出来ん。わしが預かる。』

そういうと、ちぎれた顔と胴体を持って寺に帰って行った。

それから兄は何も無かったかのように、相変わらず、他の人形にも落書きをして、俺に関節技を決めていた。

俺のおかげで助かったのに!

それにしても、ばあちゃんありがとう!

ばあちゃんは俺が産まれてすぐに死んじゃったから、俺は顔さえ知らない。

バカ兄は、ばあちゃんに助けてもらった事をどう思ってるんだろうか?

大人になった今、この事件をふと思い出した。

バカ兄と酒でも飲みながら聞いてみるよ

怖い話投稿:ホラーテラー ノーマルさん  

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