短編2
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パワーの使い道

高校の部活での話。

俺のいたサッカー部は結構良い線行ってたんだ。俺は3年までずっとベンチにも入れない下手くそだったんだが、レギュラー争いする奴等はマジで上手くて、それこそ明けても暮れてもサッカーしてるって感じだった。その中でも上手い何人かはレギュラー確定で、チームワークも良かった。監督も信頼してた。

3年になってすぐ、そいつらのうちの一人が怪我をした。通学途中、自動車との接触事故。怪我自体は大したことなかったけど、それでしばらく試合に出られなかった。

やっと復帰して、さあ次の試合に出ようってなった時、再び怪我。家の階段を上から下まで踏み外したという漫画みたいな理由。さすがに監督もしらけて、そいつとポジション争いしてた奴(正直、技量はだいぶ劣ってたが)を代わりのメンバーに加えて、そいつ抜きの試合組み立てを考え始めた。

で、だめ押しの三度目は何とそいつ駅のホームに転落。電車が来る前に引き上げられたので、大事には至らなかったけど、事情を聞かれたそいつは「誰かに押された」と主張した。けど、そいつ以外は誰もいなかったため、結局そいつが勝手にふらついたって事になった。

その頃には大きな試合もほぼ終わってて、3年は引退。そいつは3年生の間まともな成績を上げられなかった。チーム自体も期待されていたほどぱっとした戦歴は残せなかった。チームメートはみんな惜しがっていた。そいつがいたらもっと勝てたかもしれないとか、そいつが試合に出てたらすげぇ活躍したかもしれない…とか。

俺もそう思う。

だから、そいつの怪我の理由が、そいつとポジション争いしてた奴のせいだとは今更言えない。

今更言っても仕方がないし、今は消えてるから。

そいつの背後にいつも張り付いて、隙あらばそいつを地面に押し倒そうとしていたポジション争い野郎の生霊。

怪我続きだったそいつは今はピンピンして楽しくやっている。

ポジション争い野郎は、卒業後進学はしたが体を壊し休学、それから結局退学して脱け殻みたいな引きこもりギリギリの生活を送ってるそうな。人を呪えば己に返ってくるっていう見本のようだ。

あんだけすごい執着で背中に張り付いてたパワーを他に使えば、あいつも多分今、よかったのになぁ。

そう言ってやればよかった?…ま、今更だよな。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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