これは、俺が唯一体験した心霊体験だ。
ほんの一瞬の出来事だったが、俺はこの体験から1つだけ学ぶことがあった。
実際、幽霊なんてのは、生前なになにがあって地縛霊になっただとか、この世に未練があって残ってるだの言われてるが、そんなものよりも、もっとこわいものがあるってことだ。
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俺は、そのとき車を運転していた。
実家に帰るためにだ。ただ、その日は土砂崩れがどうとかでいつものルートを使うことができなかった。
だから、カーナビを頼りにすこし遠回りな道を走っていた。
この道は、カーブが多いためかわからんが、事故が多い道らしく、少なくともその日はほとんど車の通りがなかった。
そして途中にある山のトンネルに入ろうとした時、ふと花束が目にはいった。
多分、なんかの事故で死んだ人にたむけられたものだろう。
周りに比べて新しい感じのガードレールの下に置いてある花束だ。
その瞬間、グイイッとその花束の方へハンドルが引っ張られた。
焦って急ブレーキを踏み、車を止める。
ガードレールにぶつかりはしたが、突き破って落ちるなんてことには、なんとかならなかった。
車を後退させ、もう1度発進させようとしたその時、花束の近くに男が立っているのが見えた。胸よりしたが、ぐしゃぐしゃになっていて、顔も血にまみれている。
どう考えても生きてはいないその男が、こちらを見てニタニタ笑っている。
そいつを見た瞬間、「ああ、こいつがやったんだな」と思った。
それと同時に、「こいつは、道連れがほしいとか、恨みとか、そんなんでこんなことをやってるんじゃない、ただ人を殺すために、悪意でやってるんだ。人を殺すために死んでもなおあの場所に残ってるんだ。」
ということがわかった。
そいつはニタニタ笑ってこちらを見ているだけで、しゃべることすらしなかったが、このままここにいては、またやられる、と思い、車のスピードをあげてすぐにそこを立ち去った。
作者ナン卍