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中編4
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これは夢の中だ。

すぐにそう理解できたのはハイヒールを履いているからだ。

自分は誰だか分からない女性になって夜道を歩いていて、何かを目指して歩いている。きっと仕事が終わり帰宅でもしているんだろう。

そんなことを考えながらもこの夢に少し違和感を感じた。

明らかにもう1人の誰かがいる。静かで暗い夜道。

「カツカツ」と響く自分の足音より少しばかりテンポの速い足音の気配がする。

だんだんと近づいてくるその音にはただならない何かを感じた。

後ろを振り返る余裕など無い。迫り来る恐怖から逃げきるため、ただひたすら走り続けた。

shake

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「ドゴッ」

後頭部に重たい衝激が走った。誰かに殴られたのか。

同時に天地が揺らぎ、視界はぼやけた。

薄く残る意識の中、その誰かにズルズルと引きずられ、そしてどこかへ連れていかれていることだけは認識できた。

ただ腕を掴まれているのか、脚を掴まれいるのかそんなことさえも分からない。

しばらくして意識が完全に途絶えた。

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そして視界が開いた。

辺りは明るく昼間のようだった。

夢から覚めたのだろうか?

『まったく、なんて夢だったんだ。』

しかし、そう思ったのも束の間、まだ夢の中であることに気がついた。

どうやら次はおばあさんになってしまったようだ。

だがひどく気が動転していて、何故だかこんなこと叫んでいる。

「その子は離しなさい!!いいから早く!!お金ならそこに置いてあるでしょうが!!」

自分でもよく分からないことを誰かに言い放っている。ただ理解できないような言動なんてのは夢の中ではよくあることだ。

『しかし、おばあさんの視界とはこんなにもボヤけているのか、何も見えやしない。しかも耳まで聞こえにくいじゃないか。大変なんだなあ。』

なんてこんな状況においても変に冷静な自分の感覚に少し笑いそうにもなった。

しかし、そんな余裕なんて感じられるような状態ではなくなった。

shake

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何かが自分の体を貫いた。

腹部への鋭い痛みとともに鮮やかな紅が辺りを染めた。

再び薄れていく意識の中

金を握りしめどこかへ歩いて行くあいつは誰だ、誰なんだろうか。

意識は途絶えた。

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再び瞼が開いた。

辺りは真っ暗だ。

目線の高さ、身体付き、いつも自分の感じているものに近い。

今度こそ夢から覚めたのだろうか。

ただなぜ公園なんかにいるんだ。服装からしてランニング。自分はトレーニングなどするような人間ではない。

草むらから何かの気配がする。

「ドスッ、ドスッ、グチョ……」

鳥肌が立つような不快音、目を凝らしてみた。

誰かが何かを鉄パイプのようなもので何度も、何度も殴り続けてはえぐり返す。原型をとどめぬように。繰り返す。

その目を塞ぎたくなるような光景に言葉を失い、一瞬逃げだしたくもなった。なのになぜか逃げ出せない。

自分自身強く興味の惹かれるような血迷ったそんな感覚。

そいつの動きが止まった。

その瞬間我に返り走りだした。

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まずい。

犯行現場を目撃してしまった。

顔を見られてしまった。全速力で走りながら考えた。

『まずは家に帰って、警察に電話だ。よし、一から詳しく説明しよう。今は何時何分で、現場に警察がつくのは何分後だろうな、あいつは鉄の棒のようなもので女を殴っていたよな。それから…』

あんなものを見てしまったのに不思議と冷静だった。何故なんだ?

もう自分ではわかっているような気がした。

「ピンポーン、ピンポーン」

チャイムが鳴った。

もしかして、あいつが来たのか?

恐る恐るインターホンに応答してみる。

「先ほどご連絡いただいた警察の者です。詳しくお話お聞かせください。」

扉の向こう側は警察官なんかではない。

そうかやっと分かった。これは私とはまったく別の男になった夢だ。

扉を開けた。しかし、もう命がないことはわかっていた。

やはりこれも夢だ。

shake

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また視界が開けた。

今度は再び明るい。

これもまた夢だ。

それから認識する。

次は子どもになれた。やっとだ。

目の前にはおばあさんが倒れている。

血にまみれて小刻みに痙攣している。

血溜まりにお札がなげこまれた。そして紅く染まっていく。

私は身動きがとれない。

何かテープのようなもので縛られいる。

いや縛ったのか。

そして知らない男がまっ赤なハサミを突きつけて近づいくる。

いや、知っている男だ。

私だ。

shake

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目が覚めた。

尋常でない量の汗。

高揚感。

おさえれきれない笑み。

「これで、やっと全員か。」

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私は今日死刑が執行される。

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テンポがよくって読みやすかったです。

次回作も楽しみにしております

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