これは、僕が大学に入学した頃の話です。
当時、お金もなくアルバイトをしたり、親からの仕送りでなんとかやりくりしている様な、どこにでもいるごく普通の大学生でした。
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そんな僕も、大学入学を機に独り暮らしをしようと思い、駅から徒歩10分ほどのところに新築のアパートを借りました。
駅からも近いし、新築だし、家賃もわりと安いし。
そんな風に思い、とても満足していました。
そのアパートは2階建てで、1階が101~104号室、2階が201~204号室の、計8世帯が住めるアパートでした。
僕は2階の203号室に住んでいたのですが、隣の202号室に、めちゃくちゃ僕のタイプの可愛い女子大生が住んでいました。
朝晩の挨拶や、ちょっと顔を会わせたときの会釈とか、とても楽しみにしていました。
その他にも、201号室にはすごく気さくで感じのいいおじさんが住んでいて、「隣人にも恵まれて、すごくいいところを見つけたなぁ~」と、とても満足していました。
ただひとつ、あることをのぞけば…。
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それは隣の204号室でした。
たまに部屋でくつろいでいると、
sound:14
『ドンドン…』
と、壁を叩く様な音が聞こえてくるのです。
はじめのうちは気にならなかったのですが、1度耳につくとダメで、気になって仕方ありませんでした。
だから僕もちょっとイラついて、壁を叩き返したんです。
ドンドン!「うるさいねんっ!」
そうしたらピタッ…と、音はやみました。
「なぁーんだ、注意すれば分かってくれる人なんだ。」
すると次の瞬間、
shake
ドンドンドンドン!!!
ものすごい勢いで叩き返してくるようになりました。
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僕は怖くなって、明日管理会社から注意してもらおうと思い、その日無理矢理に寝ました。
そして翌日。
僕は管理会社に電話をし、事の経緯を話しました。
すると管理会社の人が言うのです。
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「そのアパート、あなた以外は誰も住んでいないんですよ…。」
作者セリカ
後に調べて分かったのですが、そのアパートが建つ前にも、似たような造りのマンションがあり、火事で全焼したことがあるそうです。
もしかすると、その火事で亡くなった住人や、逃げ遅れた住人が壁を叩いていたのかもしれません…。