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短編2
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死人の声

寺の住職だった親父が死んでからちょうど今日で一年たった。

親父は小さな頃から「死人の声」が聞こえたらしい。

気が狂いそうになる中で救いを求めたのが仏教だったと聞いている。

そのせいか、寺には2週間に一度はこの手の悩みを持った人が現れていた。

ある日のこと

秋山さんは45才くらいの独身のおばさんが「自分の親に呪われている」と言って相談に来るようになった。

「なぜ呪われていると思うのか」という親父の問いに「長い間、顔を見に行っていないから」と答えていた。

「そんな事は無い」といくら説得しても納得しない為、親父と母は彼女と親御さんに会いに行くことにした。

その数時間後、慌てた声の母から車で迎えに来るように言われ、着いた先ではパトカーと救急車が数台来ていてゴミ屋敷と呼ぶに相応しいオンボロの家を赤く照らしていた。

そして、家の中からこの世のものと思えない異臭とともに頭蓋骨を抱いた秋山さんが警察に両肩を支えられて出て来た。

その後を追うように出てきた親父は、真っ青になりながら「残念ながら亡くなっていたよ」と言って彼女と一緒に警察署に連れて行かれた。

後日。

母親を孤独死させてしまった秋山さんを寺のみんなでなぐさめた。

ただあのゴミ屋敷を見た俺としてはたとえ親とはいえ見捨ててしまうだけの事情があったのだろうと察した。

それでも秋山さんの中で罪悪感があったのだろう。だから呪われたなんて思ってしまったのだと思っていた。

落胆する秋山さんは毎日のようにお祈りに参加した。

俺の目から見ても少しづつ元気を取り戻しているように見えた。

元気になった秋山さんは逆に亡くなった母親の悪口を言うようになった。

はじめは教会のみんなも黙って聞いていたのだがだんだん耳に耐えられなくなって秋山さんを避けた。

それでも親父は黙ってうなずいて秋山さんの暴言を聞いていた。

それからしばらくしたある日、学校から帰ってくるとウチの小さい貧乏寺にパトカーが止まっている。

何事かと母に聞くとなんでも「秋山さん(仮名)が暴れて倒れた」との事。

近所の人が大声にびっくりして勝手に気を回して警察を呼んだらしい。

ここからは母に聞いた話。

その日、いつものように暴言を吐き続ける秋山さんは、親父が小声で言った言葉を聞いて急に暴れだしたらしい。

「あなたのお母さんは首を絞められてもあなたを恨んだりはしていませんよ」

秋山さんが自首をしたという話は聞いていない。

親父にこれでよかったのか?と尋ねると「誰にも言うなよ・・・」とだけ言った。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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