いい加減、うんざりしていた、毎日おなじこと、慣れたとはいえ、それがうんざりなのだ。
それに慣れたことに、うんざりだ、べつにいい、ただそのまま、見てればいいのだ。
「殺してやる」とか「死んで」とか、なんかそんなことが聞こえるが、何を言っているか、わからない。
ただ、そのままにしておけばいいのだ。
気になることもある、別のところで見たのだ、さっき見たのだ、でも、それもそのまま行き過ぎればいい、落ちればいいだけ。
だがそれができるだろうか、私はできるのだが。
『自殺が多いのです、このマンションは』とマンションを貸す不動産会社は言った。「いいですよ」と私。その意味はすぐに分かったのだが、やり方次第、過ごし方次第なのだ。
ベランダから、向かいのマンションのベランダを見る。同じようにベランダで佇んでいる人がいる。その後ろに、いた、それが。
わたしは、叫ぼうとした、しかし、まずはこっちだった。後ろから声が聞こえた、いつも通り小さすぎてわからないが、それはいい。
その後すぐに来ることに注意すればいい、うしろから速足で近づいてくる、真後ろにきた、私は避けた、それはそのまま、押すものがいなくなったせいで、力余って、自ら、ベランダを超えて、落ちていった。
私はすぐに、向かいのベランダにいる人に向かった、今落ちたものの跡は、確かめない、どうせ、いつも、いないのだから。
私は向かいのマンションに叫んだ。
「避けろ」
作者hira