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昭和41年 練兵場横、プールにて。

短編2
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昭和41年 練兵場横、プールにて。

当時父と母は別居中で、仲人さんの近所のアパートに預り状態だったそうです。私はまだ3歳で父親とたまにしか会えなくなった訳も解らず母と二人で過ごしていました。軍港のある街でまだそこかしこに防空壕が生々しく口を開けていて怖かったのをおぼえています。そんな時代なので夏ともなれば母に近所のプールをよくねだったそうです。水と相性の良かった私は足の着かない所でも浮いていられたので、監視員がいて波や流れのないプールは母も安心していたようです。膝くらいの子供用プールは混んでいるし物足りなかったので、いつもちょっと離れた50Mプールで遊んでいました。

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次第に母も目を離すことがあり、監視員のお兄さんがなにかと気にかけてくれていました。さすがになるべく縁から離れないよう、疲れたらすぐ掴まれることを意識していたのですが、その日は気がつくとほぼ真ん中にいました。さっきまで晴れていたはずの空が灰色になり、まるですべての風景が色を失ったかのようでした。となりのプールのざわめきが聞こえないし、まるで一人別の場所にきたような不安にかられ振り向こうとしたときでした。大きな手が頭を掴み真っ直ぐ下へ私を沈め、抗ってもびくともしません。私は監視員のお兄さんが遊んでくれているんだと思い、逆に自ら沈むと自由になりました。

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底を蹴って水面上に飛び出すと同時に思いきり息を吸うとまたあの手が私を沈めます。頭に手をやってもその手を掴むことができません。ただ下へ沈むと圧力から解放され、同じ手順で息が継げます。5~6回も続いたでしょうか?いい加減しつこいし疲れてきたので少しずつ縁に近づき、水面に出ると同時に縁を掴んで一気に転げ上がりドヤ顔で振り返りました。あれー?視界には誰もいません。気がつけば色も音もいつもどうりで、私は母の所に飛んで行き(監視員の)お兄さんは?訪ねると母の指指す向こうに、監視用の椅子に知らないお兄さんが座ってました。心霊現象の概念を理解して初めてそうだったのかと思い出されます。

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