長編8
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コンビニ夜勤

仕事を辞める理由ってのは人それぞれあるもんだが、まぁ十人十色だろう

給料低いとか 仕事キツいとか

人の役に立ってねぇとか まぁいろいろ

俺だっていくつか仕事は経験しては辞めてきたし、それなりに辞める理由考えなきゃなんなかったり言い訳を思いついたりした

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だが1つだけ「辞めなくてはならない」って事があった

とてもこれ以上は続けられない

第六感って言うと変だが、明日また出勤したら恐ろしい事になる気がしてね

もう10年ほど前になる話だが未だに問題は解決されてるのか、安心出来るかは分からない

あれから見たり感じたりはしてないけどね

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世の中コンビニって溢れてるよな

24時間毎日営業しててホッと一息つける休憩所みたいなもんだ

営業時間が長いからこそ働き口が沢山あって一種の社会のセーフティネットになってる

当時21歳だった俺もコンビニ夜勤をやっていた

特に夢もなく、時間もあった事で俺は週5で働いていた

そのコンビニは正直暇な店で深夜なんてほぼ誰も来ない 駅前でも無いしね

店の前に太い道路があるが深夜にたまに通るのは運送トラックか時代遅れの珍走族くらいなもんだった

ワンオペのコンビニで作業さえ終わらせればあとは自由に漫画を読んだり携帯いじってタバコ吸って朝を待つだけ

俺みたいな特にスキルも無い奴でもこなせる仕事だった

ある日の夜勤、その日もド暇で作業終えてジュースを飲みながら呑気にバックルームで雑誌を読んでいた

「暇だなぁ…」

お客さんなんて誰も来ない というかもう二時間誰も来てなかったな

夜勤なんて、そんなもん

トイレに行こうとバックルームを出た

一応そういうときは外を少し見て誰も来そうも無いか確認する

その時だった

「…ん?」

店の前に通っている道路の向こう側に、女性が立っていた

歩いてるわけでもなく ただ立って店側を向いている

「…なんだろう?あの人 こんな時間に」

不思議に思ったが、誰かと待ち合わせでもしているのだろうか いやこんな時間に? だったらコンビニの駐車場で待ち合わせにすればいいだろう

顔は見えないが道路を挟んで、ただ佇んでいる

ただまぁ特に気にすることもなく「なんかあったのかなー」程度で終わらせ、店に入りそうな素振りも無かったので俺はトイレに向かった

用を足しトイレから出る

再び外を見てみると

さっきの女性はいなくなっていた

「どこかに行ったのかな?」とか思いながらバックルームに戻り、また雑誌を読んで時間を潰した

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次の日

店の中で品出し作業をしていた コンビニの納品は大抵夜中に来る

と言ってもそんなに量は無い 暇な店だしな

そのとき流行りの歌でも口ずさみながら作業をしていた

手を動かしながら、なんとなく外を見た

またあの女が立っていた

「あ、昨日の…」

不気味な感覚がした 何してるんだ…?

ただ立っているだけ 動かない

よく見てみると服装は少し古めな感じがした 昭和後期のお母さんたちが授業参観で着てくるような服だ

俺は気持ち悪さを感じた

なるべく外を外を見ないように作業を進め、一段落終わったときにチラリと外を見るとまたいなくなっていた

「…なんなんだよ きもちわりぃな…」

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そして仕事を終えると、解放される

今日は金曜の夜勤だったからだ

土日は俺は休みなので2日間の休み

俺が休む土日は店長の息子さんが夜勤に入る

息子さんは30近い人ではっきり言ってどんくさい人だった

夜勤ノートというのがあり、必ずその日の出来事やクレームやお客さんから言われたご要望を書いて次の日の夜勤者と責任者に渡すものがある

そこに俺は女の事を少し書いておいた

「深夜3時頃、向こう側の道路に変な女を連日見ました とくに店には入って来ませんが」 とだけ

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月曜の夜勤だけはいろいろ新商品とかで納品が多くてさ、この日だけは俺と息子さん2人で夜勤に入る と言っても息子さんは要領悪くてほとんど俺が終わらせてしまうが

でもいつも1人なので2人で入る夜勤の時は結構話したりするんだよな パチンコの話とか旅行の話だったり

そのとき息子さんから例の女の話を聞かれた

息子「そういやさ、ノートに書いてあった女ってなんなの?」

俺 「あー あれすか なんか先週変な女が居たんですよね ただ向こうで立ってるだけなんですけどね

でも気味悪いんですよ 時間も時間だし」

息子「へー まぁ最近変なの多いしね 気にすることないっしょ」

と、話している時だった

息子さんが外を見た

息子さん「あれ… もしかして、あれ?…」

俺も外を見る

女が居た

俺 「あ… あれっす… まただ…」

息子さんは少し動揺しつつも年上だからか、気を張っていた

息子「話しかけてみる?なにしてんのー、って」

俺 「いやぁやめた方がいいんじゃないですか 不気味ですよ」

息子「もしかしたら強盗犯の下見かもしれんぞ?こっちの隙を見てるのかもしれん」

息子「俺ちょっと行ってくるわ」

息子さんは店の入り口を出た

♪タラタラタラン タララタラン 入店音が響く

入り口を出たところで息子さんは女に呼びかける

息子さん「あのーー!そこで何してるんですかー?」

息子さん「誰か人を待ってたりするんですかー」

女からは反応は無い

俺 「もうやめときましょ 無視でいいですよ」

息子「そうだなぁ 気持ち悪い女だ」

少したってから、また外を見たら女は居なくなっていた

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次の日 いつものように俺は1人で夜勤だった

相変わらず暇で作業を終えるとバックルームで時間を潰していた

深夜 3時

普通は皆寝てる時間だわな

俺はいつまでこの仕事をしてるんだろうか、とか適当に自問自答をしながら考えたりすると気分が重くなったりする

トイレに行こうとバックルームを出る

急に寒気を感じ、外を見る

また あの女が立っていた

俺「……」

動かないし何もない事は分かっているが、さすがに怖くなってくる

ほんと、なんなんだ…??苛立ちもあるがそれより不気味で怖さが勝っていた

とりあえずトイレに行こう そう思いトイレに入る

用を足しながら震える息を整えていた

そのときだった

♪タラタラタラン タララタラン

入店音がした

俺「やべっお客さんかな?…」

トイレしているときにお客さんが来てしまうのはたまにあることだった

俺はさっさと出し終え、トイレの鍵を開けてドアを開けた

出た瞬間俺は固まった 女が目の前に立っていた

血の気が引いた あの入店音で入ってきたのはあの女だったんだ

髪はボサボサで長く、顔は色白で目はうっ血して俺を悪意に満ちた目で笑ってのぞかせた

あまりにも恐怖で数秒固まった

俺は逃げ場も無く トイレにまた駆け込んだ

急いでカギを閉めたがその瞬間 ドアノブをガチャガチャと回してきた

俺は開けられないようドアノブを握りしめた

汗はダラダラだった

呼吸も出来ているかどうか定かではない

ずっとガチャチャチャチャチャチャチャと止むことなく開けようとしてくる

何十秒たったろうか、 ドアノブは回されなくなった

俺「はぁっ!はぁっ!……なんなんだよ…!」

その場で座り込む俺 息切れが続いている

帰ったのか?あいつは でも入店音は鳴ってない気が…

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と考えていたとき、ドアを思いっきりバァンッ!!!と叩かれた

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「ははははははははははは」

「そりゃ恥も感じなくなるわな はははははははは」

「これからもそうでしょね はははははははははははははははははははははははは」

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目を覚ましたとき、俺はトイレの中で倒れ込んでいた

「すいませーん!すいませーん!」

店の中から男性の声が聞こえた

恐る恐るドアを開けると あいつはいなかった

レジに戻るとおっさん客に少し怒られた

「お兄ちゃんトイレ?誰もいないのかと思ったよ」

「あ…すいません…」

朝まで俺は少し震えながら過ごし、仕事を終えた

家に帰り俺は吐き気とダルさで倒れ込んだ

店長にメールを打った とても今夜は出られそうになかったので休ませてもらった

家で布団をかぶり、ひたすら寝た

アイツの顔が頭から離れなかった

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朝になると、携帯が鳴った

それだけでも少しビクッと怖く感じた

携帯を開けると店長からだった

俺 「はい もしもし」

店長「俺君!?ちょっと大変なことになったんだ

今夜の夜勤は出られそうか!?」

俺 「え、何かあったんすか?」

店長「俺君の代わりに○○(息子さん)が夜勤に入ったんだが」

店長「○○が失踪したんだ 急に」

俺 「…え!?どういうことですか??」

店長「警察から電話があってな!お客さんが店に誰もいないのを不審がって通報したんだ そしたら○○が急に店から出て行ったんだ そしてどこかへ消えた そのまま連絡も何も無しだ」

俺は昨日の女の事をまた思い出した

とりあえず店が作業途中で大変な状態らしく、向かうことにした

息子さんがやり残した作業を終わらせ、バックルームに入った

店長と話をし、息子さんがなぜいなくなったのか

店長「店内カメラを見ると、深夜3時頃にいきなり店から出て行ったんだ トイレに入ってそこからまっすぐ入り口に歩いていって、ね…」

俺 「と、トイレですか??…」

嫌な予感がした

俺 「俺にも映像見せてください」

店長「これだね えーっと… はい ここから」

俺 「…」

店長「…」

俺 「……! ……………」

店長「…ね トイレから出てすぐ、でしょ? どこに行ったんだか…」

俺 「そうですね…」

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俺はその日に店長にお願いしたんだ

本日限りで辞めさせてください、と

ひどく店長には「辞めないでくれ 代わりがいない」と懇願されたが俺にはとても無理だった

その日から夜が怖くなってしまった とくに深夜は

店にはその日以降行かなくなった と言うより、またアイツがいるんじゃないか

出てくるんじゃないかと思うと怖くて近づけなかった

辞めてから四年程たってたまたま店の前を車で通ると、閉店して空き地になっていた

他の従業員から聞いた話だが息子さんはあの日以来戻ってきてないそうだ 失踪したまま行方不明だそう

あの日、俺は店内カメラを見たとき 恐ろしかった

店長や他の従業員、警察には見えていなかったみたいだが

俺には見えていた

息子さんは1人でにトイレから出ていなくなった、と言うが

本当は違う

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あの女に引っ張られていた

そして女はまた悪意に満ちた笑顔だった

出て行く前 一瞬、女がカメラを見た

俺は女と目が合った気がしたんだ

あの日以降、俺は1人が怖い

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