「ひろ、なに飲む?」
「コーラ!」
彼女をバイクの後ろに乗せ、近くのコンビニへやってきた。もう辺りは暗い。山道をドライブしにきたのだ。バイクを停めたとき、広美が不思議そうな顔をして言った。
「電気ついてないよー?」
「あれ。通コンビニは24時間営業じゃないの?」
「あはは。残念だったね」
「んだよ、使えねぇなっ!」
そう言い、彼氏の将也がコンビニのドアを蹴飛ばした。
ピロン、ピロン、ピロン…。
ドアが開いた。
「あれ?」
「なんだよ、蹴飛ばさねぇと開かないのかよ」
ぶつぶつ文句を言いながら、将也は入り口の前に立った。広美は怖がっていた。
「ひろ〜、はやく」
「えー。なんか怖いよ」
「怖がりだなぁ。じゃあバイクんとこで待ってて」
そう言いながら、将也はコンビニに入っていった。そのとき、窓際の雑誌売り場のところに髪の長い女の人が立っているのに広美が気付いた。
将也が危ない。そう思い、広美は即座にコンビニに入ろうとした。だが、ドアは開かない。
ガンガンッ!
ガンガンガンッ!!
「将也!将也!」
広美の声はとどいていない。優雅に買い物をする将也。カゴを片手に、飲み物売り場へと向かった。
雑誌売り場にいた女も、ゆっくりと将也のいる飲み物売り場へ。
「将也!おねがい、気付いてっ!」
ガンガンッ!
ガンガンッ!
飲み物を手にした将也は、女の存在に気付いていなかった。
レジへと向かい、店員を呼んでいる。
棚で顔はみえないが、女の頭がみえる。どんどん将也に近づく。手には包丁。
将也が危ない!
「将也ぁぁぁぁぁ!!!」
ピロン、ピロン、ピロン…。
「ひろ。なにやってんだよ」
ぽかんとした顔の将也の腕を引っ張り、コンビニを飛び出した。
息のあがっている広美の姿をみて、将也は不思議そうな顔をしている。
「ひろ、大丈夫か?」
「あ、危なかったぁ…」
「え…?」
「将也、殺されそうだったんだよ!髪の長い女がコンビニにいたの!」
必死に訴える広美を抱きしめ、将也はコンビニをみてみる。電気が消えていた。
何事もなかったかのように。
「帰ろう」
将也はそう言い、広美をバイクに乗せコンビニから離れていった。
ピロン、ピロン、ピロン…。
コンビニのドアが開く。
髪の長い女は包丁を持ったまま、目だけで将也たちを見ていた。そして、最後にこうつぶやいた。
――…
またのご利用お待ちしとおります。
: JHARD
怖い話投稿:ホラーテラー JHARDさん
作者怖話