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中編3
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ストーカー男

最近耳にした噂がある。

夜12時から12時10分の間にストーカーしてくる男がいるそうだ。その男は若い女性ばかりを狙う、いわゆる変質者。

12時からストーカーされ10分までに誰にも会わなかったら11分に殺されるらしい。

その話を聞いた日、私は友達とカラオケにいた。帰りが遅くなってしまい、あまりにも楽しかったので噂のことを忘れていた。

自分はそんなに可愛くないし、ストーカーなんかに襲われないだろう。

そう思いながら、友達と十字路のところで別れた。

「ばいばーい!今日メールすんねー」

「わかった!ばいばい!」

少し酔っ払いながら帰っていった。

周りに人はいない。車すら走っていない。いつも以上に静かだった。

ふらつきながら歩き、角を曲がった瞬間、だいたい50メートル先のほうに変なものがいた。暗くてわからない。

足がたくさんある?

違う!四つんばいになっている。

それがわかった瞬間、気が飛びそうになった。

「え…」

どんどんこっちへくる。

ベチャッベチャッ…。

ベチャベチャッベチャ…。

逃げたい。でも震えて足が動いてくれない。

近づくにつれて足は震え、ますます動かない。

こっちにこないで!

叫びたかった。

そのとき、自分の後ろを車が通った。金縛りが解かれ、即座に逃げ出す。履いていた靴を片手に、みっともない姿で逃げる。

自分の住むアパートに逃げ、扉を閉め、鍵をかける。

静かな部屋に安心をし、ほっとため息を吐く。

ベチャッベチャッ…。

ベチャッベチャベチャ…。

「え…」

音が聞こえる。

まさか追ってきたのではないだろうな、と扉の穴を覗く。誰もいない。

ベチャッベチャ…。

ベチャベチャベチャッ…。

ベチャッベチャッ…。

外じゃない!家の中だ!

変なうなり声が聞こえる。

「ひいっ!」

男は四つんばいのまま、玄関にいた。どうして家の中に。そんなこと考える間もなく、即座に鍵を開け、外へ飛び出した。

階段を降りながら、自分の家の玄関を見る。男が上半身裸のまま外に出てきていた。

「誰か助けてっ!」

叫んだが、周りに人はいない。

裸足のまま走り続ける。交番へと向かったものの、警察はいない。パトロール中だろうか。

ドアを叩きながら叫んだ。

「助けて!おねがい、助けて!」

ベチャッベチャッ…。

ベチャッベチャッ…。

後ろを振り返ると、男が顔を出す。体を引きずりながら、こちらへとくる。

ドアをたたき、助けを求めた。

「開けてぇ!おねがい、助けて!はやく!」

男が近づき、足をつかもうとしたとき、再び逃げ出した。

次はコンビニのほうへといく。

ピロン、ピロン、ピロン…。

「ひっ!」

目の前に男がいた。

体を引きずり、腰が抜けてしまった彼女の足をつかむ。グッと足首から痛みがはしる。

「いやぁ!離してよ!」

男の腕を振り払い、友達と別れた十字路へと向かう。誰かに会えばいいのだ。そう思いながら、友達の家へ走っていく。

そして思わず足を止めた。

「うそ…」

友達の家の前に男の姿があった。先回りされたのか。男は笑っている。

ふざけんな。

恐怖よりも怒りが芽生えた。手にしていたバッグを握り締め、それをこちらへやってくる男に向かって投げ飛ばした。

「いい加減にしてよ!」

男は笑みながらこちらへくる。

近くに置いてあった植木鉢を投げる。それでも男は追いかけてくる。

「こっちにこないで!」

怒りを隠せず、怒鳴った。

ベチャッベチャッ…。

ベチャッベチャッ…。

壁にあたってしまった。

男は一度「ふっ」と笑う。そして…………。

――…

最近耳にした噂がある。

夜12時から12時10分の間にストーカーしてくる男がいるそうだ。その男は若い女性ばかりを狙う、いわゆる変質者。

12時からストーカーされ10分までに誰にも会わなかったら11分に殺されるらしい。

殺された女性が逃げ回った場所に、その男は現れる。

――…

逃げれば逃げるほど、数が増えるストーカー。

: JHARD

怖い話投稿:ホラーテラー JHARDさん  

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