彼女は数年前に旦那と別れ、幼い男の子と二人で暮らしていた。
仕事もうまくいかず、離婚前に溜込んだ貯金も随分前に無くなっていた。
『もう、死ぬしかない…』
彼女は、それしか思い付かなかった。
吐く息が白く染まる中、どのくらい歩いただろうか。目の前には湖が見える。
『ボートに乗ろう…』
『うん』
久々の外出だったので、男の子は少し嬉しかった。
湖の真ん中に着いた時、彼女は漕ぐのをやめた。
『ママ、どうしたの?』
泣いている彼女に男の子が尋ねる。
『ごめんね、ごめんね…』
彼女はそう呟くと、男の子を抱いて湖へ飛び込んだ。
彼女は、目が覚めると病院だった。
『○○は?』
彼女は看護婦に尋ねた。
『残念ですが、お子様は…』彼女だけ、死ねなかったのだ。
数年後、彼女は再婚した。男の子も授かった。
ある日、三人でドライブに出かけた時、見覚えのある湖へ。そう、数年前男の子と飛び込んだ湖だ。
『ボートに乗らないか?』
旦那が言った。
『乗る乗る』
男の子が嬉しそうに言った。
仕方なしに彼女も行くことにした。
ボートが湖の真ん中に着いた頃、男の子が
『ママ、おしっこ』
『仕方ないわね。持っててあげるからここでしなさい。』彼女は男の子が落ちない様にしっかりと捕まえている。
『ママ…』
『どうしたの?』
彼女が返事をすると、男の子は振り返って…
『今度は落とさないでね…』
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話