短編2
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心中

彼女は数年前に旦那と別れ、幼い男の子と二人で暮らしていた。

仕事もうまくいかず、離婚前に溜込んだ貯金も随分前に無くなっていた。

『もう、死ぬしかない…』

彼女は、それしか思い付かなかった。

吐く息が白く染まる中、どのくらい歩いただろうか。目の前には湖が見える。

『ボートに乗ろう…』

『うん』

久々の外出だったので、男の子は少し嬉しかった。

湖の真ん中に着いた時、彼女は漕ぐのをやめた。

『ママ、どうしたの?』

泣いている彼女に男の子が尋ねる。

『ごめんね、ごめんね…』

彼女はそう呟くと、男の子を抱いて湖へ飛び込んだ。

彼女は、目が覚めると病院だった。

『○○は?』

彼女は看護婦に尋ねた。

『残念ですが、お子様は…』彼女だけ、死ねなかったのだ。

数年後、彼女は再婚した。男の子も授かった。

ある日、三人でドライブに出かけた時、見覚えのある湖へ。そう、数年前男の子と飛び込んだ湖だ。

『ボートに乗らないか?』

旦那が言った。

『乗る乗る』

男の子が嬉しそうに言った。

仕方なしに彼女も行くことにした。

ボートが湖の真ん中に着いた頃、男の子が

『ママ、おしっこ』

『仕方ないわね。持っててあげるからここでしなさい。』彼女は男の子が落ちない様にしっかりと捕まえている。

『ママ…』

『どうしたの?』

彼女が返事をすると、男の子は振り返って…

『今度は落とさないでね…』

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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