ある夫婦がいました。
2人には3歳になる娘もいましたが、仲がいいとは決して言えないような状態でした。
その原因は夫にありました。
夫は普段は優しい性格なのですが、大変な酒好きであり、酔うと性格が一変して暴力的になってしまうのです。
その夜もちょっとした事から口論になったり、頭に血が上った夫はとうとう妻を刺し殺してしまったのです。
深夜であったため、幸い娘はすでに寝付いていました。
しかし、ここはそんなに田舎ではなく、会社にも行かなければならないため、遺体を人目の無い場所まで捨てに行くには時間が足りません。
会社が休みなのは5日後。
とりあえず遺体をどこかに隠し、その日に娘を両親にでも預けて山奥にでも捨てにいけばいい。
夫はいったん妻の遺体を庭の片隅の花壇の横あたりに埋めました。
下手に家の中に隠して、娘に見付かってはまずいと思ったのです。
次の朝、不思議と娘は妻がいない事に対して何も聞いてきませんでした。
聞いて来ないなら、下手に言い訳をしない方がいい。
そう思っていると、ふと娘が自分の方をじっと見ている事に気付きました。
「パパの顔に何か付いてるか?」
もしかしたらかえり血でも付いているのだろうか?
内心ドキドキしながら尋ねると、娘は首を横に傾けキョトンと不思議そうな顔をした後、
「何でもない。」
と言って朝食を食べ始めました。
そして夫はその後も娘にはあの夜の事は何も話さず、いつも通りの生活を続けました。
いよいよ明日は妻の遺体を捨てに行く日。
いろいろと明日の準備をするために、夫はいつもより早めに帰宅しました。
しかし、家に娘の姿はありません。
鍵は開いていたので家にはいるハズなのですが、もう夕方だというのに電気すらついていないのです。
心配になって探してみると、娘は庭の片隅でしゃがみ込んでいました。
夫は驚いて娘に駆け寄りました。
「何してるんだ!!こんな所で!!」
そこは妻の遺体の埋めてある場所です。
娘はおもちゃのスコップでそこを掘り起こそうとしていました。
「だってパパ、ここからね、変な臭いがするの。」
夫はハッとして娘に怒鳴り付けます。
「とにかく、もうそこには近付くな!!早く家に戻りなさい!!」
きっと遺体の腐敗が始まったのです。
早く捨てに行かなければ…。
そう焦っていると、また娘が自分を見ていることに気付きました。
あの夜から、娘はたびたび自分の方を見ているのです。
気が立ていた夫は娘にまた怒鳴ります。
「だから何なんだ!!いつもいつも見やがって!!いったい何なんだよ!?」
すると娘は言いました。
「ねえパパ、どうして?」
「はあ!?」
「どうしてパパはいつもママをおんぶしてるの?」
怖い話投稿:ホラーテラー 野菜人さん
作者怖話