あれは、まだ少年の頃の秋祭り。
神社の境内に並ぶたくさんの露店。
その中で俺は信じられないものを発見した。
それは驚くほどリアルなウ○コの…ゴムおもちゃだった。
当時、ウ○コといえばトグロを巻いているのが常識だった。
ところがそのウ○コは、独立した2本によるリアルな構成。
それが絶妙なバランスで重なり合い、
色合いも本物そっくりで、しかもご丁寧に品の良いちり紙の上にポテンと乗せられているじゃないか。
このリアリズムに、俺は参ってしまった。
そのウ○コを売っているのはこの町では一度も見かけたことのない怪しげな老人だった。
白髪の長い髪、黒い帽子、黒いコート。
口にはマスクをしていて表情は分からないが、無表情のように見えた。
それぞれ大きさの違うウ○コたちがその老人の前へ並べられていた。
「…ほしいなぁ。。」
しかし、その時は結局買わなかった。
いや、恥ずかしくて買えなかったのだ。
俺は家に帰ってからもあれが頭から離れなかった。
俺は母の肩を揉みながらその話をした。
俺「お母ちゃんあのウ○コがほしかった。」
母「じゃあ買えよ。」
あまりにも呆気なく母はそう言った。
俺はやっと決心した。
俺「よーし!買うぞー!」
しかし、いざ露店の前へ行くと尻込みする。
しかもタイミング悪く数人の客がそのウ○コで大いに盛り上がっているじゃないか
「うわーなんだこりゃ!」
「こんなの買う奴いるのかよー?ワハハハ」
「さすがにいねえだろ!」
「気持ち悪りぃ!」
しかし俺は引き返すわけにはいかなかった。
ここで引き返しては、自分自身に負ける気がしたのだ。
ここは冗談めかして…
俺「ぼ、僕買おうかなーアハハー…」
「ええっ!」
「うげー!」
「ほんとかよ!」
一番小さいサイズのウ○コを手に取ると、書いてある値段どおり300円を老人に渡した。
老人「ありがとうね、坊や」
そのときマスク越しに、老人が笑っているように見えた。
その帰り道、俺はすごく後悔していた。
俺は人前でウ○コを買った人間だ。
店のまわりにいた彼らはきっと、ウ○コをみるたびに俺を思い出すだろう…
こうして、俺の暗い秋祭りは終わった。
その日、ウ○コは我が家の玄関で華々しくデビューした。
ちり紙と水と一緒にどこかに置いておくだけで家族がだまされるので気分がよかった。
だが、あの日から数日たったある日、机にあったウ○コが消えていた。
家族に聞いても誰も「そんなものかまうわけない」といった。
あのウ○コのゴムおもちゃは、それから何度探しても見つかることはなかった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話