これは私が実際に体験した実話です。
長いうえに拙いところが多いとは思いますが、目をつぶってくださるとうれしいです。
私は小さい頃から喘息持ちだったせいで、まるで決まりごとのように年に一度は地元の病院に入院していました。
しかしその年は喘息ではなく髄膜炎という頭の病気にかかり、行きつけの病院に担当医がいなかったためちょっと都会にある別の病院へと入院することになったのです。
その病院は子供専用の割と小さな病院で、当時小学生だった私でも母親の付き添いは禁止されており、毎晩夜は同じ部屋の男の子と二人きりで過ごさなければなりませんでした。
初めは知らない病院で親の付き添いもなく初対面の子と二人きりなどとんでもないと不安でいっぱいでした。
けれど幸いなことにその男の子(以下Aとします)はとても気さくで喋りやすく、年が近いこともあってすぐに友達になることができたのです。
自慢ではないのですが私は昔から霊感は皆無で、その病院で通算8回目の入院だったにもかかわらず幽霊の幽の字さえ見たことがないくらいの子供でした。
しかし、例え見たことがなくても恐いものは恐い。
いつもベッドの下やカーテン越しにある隣の空ベッドは私にとって恐怖の対象でした。
ある日のことです。
いよいよAの退院が明日に決まり、彼のベッド周りが急速に片付けはじめられました。
不謹慎ではありますが、つまらない闘病生活で唯一年の近い話し相手がいなくなるのは私にとってとても寂しいことでした。また、広い大部屋の中で一人きりになるということもまたAの退院を寂しく思う理由の一つだったのです。
その日の夜、私たちは何時もどおりに夕飯を食べ、歯磨きをし、消灯の時間にはきちんとベッドに入って寝る準備をしていました。
さすがにそこは小学生。消灯時間ぴったりに寝れはしないものの、一時間もすれば確実に熟睡モードです。
いつもはそのまま朝までぐっすりなのですが、しかしその日は違いました。
誰とも知らないノックの音に起こされたのです。
私が寝ていたベッドは6つある中の入って左の窓際。テレビなどを挟んですぐそばに大きな窓があるのですが、明らかにそっちの方からコンコンコンコンとノック音が聞こえてくるんです。それもしつこいぐらいにコンコンコンコンと。
最初は軽い感じのノック音だったんですが、そのうちバンバンと窓を叩くような音になり、ますます煩さを増してきました。
窓についてるカーテンは引いてありましたし、私も何かを見たわけでもなくその時は恐怖より眠気の方が強かったので、あろうことかそのまま寝てしまったのです。
本当に眠いときって判断力が鈍るというか夢か現実かもわからなくなるんですよね。それが幼いときだとなおさら。
まあそんなわけで、そのときはそのまま朝まで寝てしまったんです。
しかし翌朝Aが「昨日何かすごい寝言言ってた」と私にいうので話を聞けば、なんでも消灯をすぎてもなかなか眠れずにいたAは、いきなり私が
「誰かが窓叩いてる」
と言ったのを聞いたそうなんです。
そういえば昨夜はノックの音が煩かったと思い出し説明すれば、そんな音はいっさい聞いてないというA。
まさかと思いながらも二人で窓をチェックすると、窓には幼児サイズの小さな手型が3つほど。
別にそれだけでは大したこともないのですが、(一般的に窓に触るとできる手形だったので)ゾワリとしたのはそれが窓の外側からついていたことでした。
私達が入院していた病室は2階にあり、ナースステーションを挟んで赤ちゃん病棟があったため、こちらの病棟に赤ちゃんがくることも、ましてや外側からくることなんてまずありません。
また誰かが恐がらせるためのいたずらをしたとしても、部屋に泊まっていたのは私とAと二人だけ。そもそも掌の大きさが違います。
今までにこんなことがなかっただけに恐怖は倍増。 そんななかをAが退院してしまったため部屋には私一人。
今度こそ絶対になにかしらみてしまうと小さいながらに悟った私は、看護婦さんに事情を説明し無理を言って隣の空きベッドに寝てもらうことにしました。
その後は何事もなく私も無事退院し家に帰ったのですが、後から母に
「入院中はあんたが恐がると思って言わなかったんだけど、実はまだあんたが生まれてすぐのころあの病院に入院したことがあってね。そのときあんたの隣に入院してた子、亡くなっちゃったのよ」と聞かされたときは心底震えるはめになりました。
そのことが関係あったのかどうかはわかりませんが、後にも先にも恐い体験をしたのはこの時だけでした。
手形なんておきまりすぎる、と思う方も多いとはおもいますが、約10年たった今でもあの煩いノック音と窓についた手形は忘れることができません。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話