中編3
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人形VS俺 後編

後編です

とめどなく聞こえるサキの声

恐怖でブルブル震え

震えのせいで歯がガチガチと鳴る

サキ『アケテ…アケテアアアアアアアアアアアアアアアアケテ…アソボウ………ネェ?』

ピタリと声がやんだ

ドン!

背中に強い振動を受け

前のめりに両手を付いてしまった

ヤバイ!入られる!

そう思って慌てて扉を押さえようと振り向いたが

時すでに遅し…

開いた扉から地面を這うように毛糸の髪の毛が見えた

情けない事に尻餅をついたまま後ずさり

不気味に這うサキから逃れようとした

が視線だけはサキから離せない

目を反らしたら捕まる気がした

毛糸の髪の毛が見え

ボタンの顔が見え

フランスパンみたいな両手で地面を這うようにゆっくり扉から姿を現すサキ

足で歩いていても怖いが

這って来るのもだいぶ怖い

頭をもたげ

サキ『ミィツケタ…ワタシサキ、イッショニアソボウ』

ズルズルと俺の元へ近寄る

俺もズルズルと尻餅で後退し、不気味な縫いぐるみから逃れようとしたが

後退しているうちに

そう広くない部屋の壁に追いやられてしまった

逃げ場がない…

諦め目をつぶり

少しでも恐怖を和らげようと別の事を考えようとしたが

サキ『アソボウアソボウ』

声とはいずり回る

ズズッ…ズズズッ…ズズッ

と縫いぐるみと床が擦れる音が

耳に入り込み

恐怖しか考えられなかった

サキが床を擦る音がどんどん近寄る

目を開ければ

すぐそこにいるだろうという距離で不意に音が止んだ

音が止んでも暫く目をつぶりガチガチに固まっていたが

何も仕掛けてこない

どれほどたったんだろう

だんだん恐怖が収まり

薄目を開けると

サキ『アソボウ』

体育座りした格好の俺の膝の上に座り込み

俺の顔を覗き込むボタンの瞳と目があった

俺「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

情けないが叫び声を上げ

膝にちよこんと乗っかるサキを

突き飛ばした

突き飛ばされ

壁にぶつかり落ちる

サキ『ヒ…ヒドイ…イタイ…イタイイタイイタイイタイ……イタイイタイイタイイタイ…ネェ、イタイ!』

サキが顔を上げ

ボタンの瞳で俺を睨み付ける

殺らなければ殺られてしまう

そお思った俺は

不思議と身体が動き

机の上のペン立てから鉛筆削る用に使っていたナイフを引っつかみ

サキに飛び掛かった

ガツッ!

鈍い音をたて

サキの腹に刺さった

サキ『…アソボウ……………』

刺してすぐサキから離れ部屋の隅に逃げたが

サキはそれから動く事も喋る事もしなくなった

暫くサキを眺めていたが

大丈夫だと自分に言い聞かせ

恐々サキに近付き

ナイフを抜き取ろうとしたが

中の四角い物に刺さりこんでしまって抜けない

仕方ないからカッターで腹の部分を切り裂き

中身ごとナイフを取り出すと

ナイフは四角い木箱に刺さっていた

声を出す機械なんかじやなかった

木箱の蓋を開けると

蓋の裏には『美咲』と書かれてあり

中身は綿に包まれた

干からびた細いモノ…

昔母に見せてもらった事がある

臍の緒だ

理解した瞬間情けないが

トイレに吐きに走った

吐き終わり、落ち着いた頃

家族が帰ってきて

縫いぐるみの中身が気になり開けたら箱が出て来た

俺の体験は伏せて(言った所で母親を恐怖させるだけだから)妹には秘密で、母にだけ伝えた

母は急いで段ボールに腹を裂かれ綿の飛び出た縫いぐるみと木箱をばぁちゃんに送り返した

後日ばぁちゃんから荷物と手紙が送られてきた

手紙を母に読んでもらうと

『お祓いしてないのが混じってたみたいだね、俺くんには怖い思いをさせたね…ごめんね。もおお祓いしたから大丈夫だよ』

荷物の中身は…

切り裂かれたお腹を丁寧に縫い合わされたサキだった

ばぁちゃんWWWW

駄文お読み下さりありがとうございました

ついでに

今も俺の部屋の本棚には喋らなくなったサキが座ってる

怖い話投稿:ホラーテラー 黒ネコ大和さん  

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