中編3
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実話なんです

もう随分昔の話だ。

新学期が始まったばかりの少し寒い日だったと思う。

僕の通ってた小学校に、都会から転校生がやって来たんだ。

実名は言えないので福田君とでもしておこうか・・・

彼はお金持ちの子で、いつもポケットに万札を何枚か突っ込んでいた。

僕を含めみんな貧しい家の子だったので、おごって貰おうと、福田君の周りにはいつも人だかりができていた。

福田君はいつも機嫌良くおごってくれた。今から思えば友達をつくろうと必死だったのかも知れない。

彼は、町で一番大きなホテルの会長の孫とかで、どうしてそれまで他県にいたのか詳しい事は分らない。

家庭はかなり複雑だったようだ。

夏休みに入る2週間位前だったか。特に仲の良かった5人が彼の誕生パーティーに呼ばれ、祖父が会長を務めるホテルの一室に行ったんだ。

なごやかな雰囲気でケーキ食ったりゲームしたりして楽しくやっていたのだが、何を思ったか、福田君、突然立ちあがるとズボンをおろしてパンツ一丁になったんだよ。

その頃にはみんな福田君の事友達だと思ってたし、おごって貰う為に付き合うって感じじゃなかったから、彼の行動は明らかに不自然だった。

ウケ狙いってのは明らかで、子供心に少し嫌なものを感じたのを覚えている。

彼は部屋の窓を開けると、ホテルの裏山に靴下のまま降りた。

芝生が植えてある裏山の斜面にはあちこちに大小さまざまな石が埋まっていた。

(何をするつもりなんだろう?)

僕ら5人の視線を一身に浴びて、福田君は嬉しそうだった。そして・・・今から思えばありえない事を口走ったんだ。

「この石、みんなお墓なんだって!無縁仏ってやつ!ここ昔処刑場だったらしいよ」

そう言うと福田君、向こうを向いてパンツを下ろすと、芝生から覗いてる石に小便を掛け始めたんだ。

そのホテルの裏山が昔処刑場だったなんて初めて聞いたし、5人共、ハナっから信じちゃいなかったから(ウケを狙って・・・馬鹿じゃない?)くらいにしか思っていなかった。

福田君のサービス精神は見事に空振りに終わり、お誕生日パーティーは大いに白けてしまったんだ。

(なんだあいつ・・・)

僕ら5人がホテルを後にする時の福田君の顔、いまだに目に焼き付いて離れない。

今にも泣きそうな顔。

子供って残酷だな・・・今になってつくづく思う。

その日以来、僕たちは福田君を無視し続けた。

夏休みが終わるまで・・・

新学期が始まり、久しぶりに福田君を見た僕たちは絶句した。

痩せこけていた。

肥満と言っていいくらい体格の良かった福田君が。

(福田君・・・ごめん)

僕は夏休みの間中、福田君から家に何度も電話がかかってきていたのに無視した事を謝ろうとして近づいた。

その時、福田君に何を言われたのか・・・はっきりとは覚えていない。

「近寄んな!ぼけ!カス!貧乏人」

こんな感じの事を叫ばれたと思う。

それをクラスの者全員が耳にした。

完全無視が始まった。

僕もキレてたから当然無視した。

あれは・・・夢だったかも・・・

今でも信じられない。

信じたくない・・・

2学期も半ばにさしかかった時、それは起きた。

何の授業だったのか全く覚えていない。

突然、福田君が大声を上げると机の上いっぱいに血を吐いたんだ。

大量の血だった。

その血の中に・・・

虫がいたんだ。

見た事も無い虫。

白くて、細い魚のように見えた。

血の中を泳いでいた。

10匹はいたと思う。

そして・・・クラスの者全員がその鳴き声を聞いた。

ギギ・・・ギギ・・・ギギギギ・・・

「キャー」

「ワー」

忘れもしない・・・先生までもが叫びながら教室を飛び出した。

福田君は救急車で運ばれ、以後学校に来る事は無かった。

カウンセリングとかで、女の人が毎日のように僕のクラスにやってきた。

クラスの者殆んどが3学期が始まるまで学校を休んだ。

先生はショックで辞めてしまった。

あの時の事はいまだに同窓会で話題になる。

みんな・・・

「誰に言っても信じてもらえないんだよね」

・・・と言ってる。

何年か前、台風でそのホテルの裏山が崩れ、大量の骨が流れ出たという。

そのホテルは今でも営業している。

福田君がその後どうなったのか・・・知るすべは無い。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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