俺のばあちゃんは、四年前に他界したじいちゃんが昔植えた桜の木に毎朝きっちり6時に水やりするのが日課だ。
なんでその桜の木を大事にしているかというと、ばあちゃんの二十歳の誕生日に持ってきてくれた桜であり、貰った当時じいちゃんのこと別に好きじゃなかったんだけど、枯れたら桜が可哀想だと仕方無く育ててるうちに桜には愛着が、じいちゃんには愛情が芽生えたらしい。
だから今も水やりを怠っていない。
そして今日の朝。
ばあちゃんが起きない。
時計はもう11時を過ぎてる…
「ばあちゃーん…?」
俺が耳元でそっと呼びかけてもやっぱり起きない。
流石に大きな声では起こせないので放っといた。
…
そんなこんなで時計は12時を指した。
そしたらいきなりばあちゃんが起きた。
…ふと、気になった事があったのでばあちゃんに聞いてみた。
「どんな夢見てたの?」
ばあちゃんは一瞬キョトンとしたが、俺に話してくれた。
「…なんかよ、上を見れば太陽が燦々と照ってて、下を見れば白くてめんこい(可愛いらしい)花が地面いっぱいに咲いててよ、天国かと思ったっけ。
…そしたら私の前にばり(だけ)一本の道ずぅ―――っ…と延びててよ、その先にじいちゃんいたんだっけ。
じいちゃん、私の事ば『なぁーつ(じいちゃんがばあちゃんに使ってたあだ名)、早くこっちゃ来ーい…なぁーつ、早くこっちゃ来ぉーい…。
』ってにこにこして早く早くって手招きすんだ。
嬉しくて嬉しくて、じいちゃんとこさ歩みかけたら後ろからキシキシ音するから振り返っと桜が枯れてくんだ。
どうすっかと悩んでたら…またじいちゃんが『なぁーつ、なんでこっちゃ来てけねんだ…?』って今度は泣きそうな声で呼んできたんだ。
やっぱり行こうって思ったけど、何となくじいちゃんとまた会える気がして私はじいちゃんさこう言った。
『水やんねと桜が枯れちまうべ?あと、また会えるべ?』そしたらじいちゃん『…んだな』って悲しそうに言ってその場からフッと消えたんだ。
」
言い終わると、ベッドからよっこいしょと降りた。
「…んで目、覚めた」
寂しそうな口調でボソッと小さく言葉をつけ足した。
水やりにのそのそと行くばあちゃんの背中が小さく見えた。
俺はばあちゃんの部屋の窓から庭の桜を何気なく見た
じいちゃんが立っていた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話