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中編3
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その時は怖かった

ちょうど1年前の今頃。

雪の降っている夜でした。

とても寒かったので、時計のアラームをセットして、いそいそとベッドにもぐり込みました。

その日は疲れていたので、すぐに眠りに落ちることができたみたいでした。

けれど、おかしい。

眠っているのに、意識がはっきりとしている。

けれど少しの間のあとで理解し、

『ああ、またか。』

と、体の力を抜いた。

それは、何かが私の部屋に来ている時に良く起きることでした。

私の体の方は眠っている状態なので、一切動きませんが、金縛りとは異なったものです。

自力ではどうすることもできないので、黙ったまま、相手の出方を見ていました。

危ないものではなさそうだったのですが、しきりに何かを伝えようとするのが感じられたので、私のイメージの中の手を伸ばしました。

ふと、わたしは目を開けました。

そこは、わたしたち家族の質素だけれど大切な家。

見慣れた木の壁、木の天井、木の家具。

夫が作ってくれたテーブルの上で、蝋燭が暖かな光を放っている。

その光は、わたしの腕の中の愛しい赤ん坊を照らします。

ああ、今日はなんて寒い日なんでしょう。

薄いガラスの窓がすっかり凍り付いているわ。

わたしはぱりぱりに乾いた薪を暖炉にくべて、残りを傍らに積み上げました。

あの人(夫)は寒くないかしら?

どうか、無事に帰ってきますように……

息で火を消して、赤ん坊を抱いたまま、何枚ものごわごわした毛布に包まりました。

ゆっくりおやすみ、わたしの可愛い可愛い赤ちゃん。

わたしは目を閉じました。

真夜中。

わたしは荒らされた家の床に呆然と座り込んでいました。

開いたままのドアから雪が吹き込んで、火の気の無くなった家に少しずつ溜まっていきました。

わたしの目から熱いものがぼろぼろと落ちます。

わたしは獣のように叫び声をあげました。

「わたしの赤ちゃんーーーっ!!」

足元で鏡が割れる音がしました。

私はむくりと飛び起きました。

冷や汗と、激しく脈打つ心臓。

かつて人だったものと精神を繋げた疲労から、私は気絶するように眠りに就きました。

朝、アラームの音で目を覚ますと、私は何事も無かったかのようにきちんとベッドの上にいました。

とてつもない疲労感から、体を起こすことができず、加えて激しい頭痛に目を開けられません。

いつもの時間を過ぎても起きないことを不審に思ったのか、母がわざわざ起こしに来てくれました。

何度か治してくれようとしたのですが、なぜか全く癒えない。

私は疲れていたので、〇〇さん(曾祖母の同業の方)を呼んでと母に頼み、再び眠りに就きました。

それからどれくらいの時間が経ったのかは分かりませんが、目を覚ましたときには〇〇さんがおいでになっており、私の体調もすっかり良くなっていました。

「Aちゃん(私の本名)、」

〇〇さんは深刻な顔でお話を始められました。

「いつもAちゃんが体験してるのは、ただ亡くなった方の記憶を見せてもらっているだけ。

生きている人同士で言うと、お話を聞いているだけになる。

でも、今回のはAちゃんが亡くなった方の記憶に引きずられちゃった。

まるでAちゃん自身が体験したことみたいに感じなかった?」

〇〇さんは、私の目の奥から昨夜の様子を引っ張り出して(私はそう感じた)、

「うん、もうこのままにしておくわけにはいかないみたいよね。……天寿を全うする前に、仏さんになっちゃうね。」

今思い出してもパニックを起こしてしまいそうです。

あの頃の私は、こういった事象を忌まわしいと思い込んで、なるだけ避けていました。

それが、今では曾祖母と同じ道を選んでいるのですから。

人生ってどうなるか分かりません(^-^)

お付き合い下さり、ありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー あおもりんごさん  

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