これは現在ナースとして活躍してる友達がまだ実習生だった頃の話です。
ある朝、5歳の男の子が救急で運ばれて来たそうです。
居眠り運転の車に轢かれた交通事故で酷い脳座礁だったみたいです。
すぐに手術が始まり、真っ青な顔で1番に駆け付けてきたのは男の子のおばあちゃんだったそうです。
男の子は一人っ子で両親は共働き。だからなのか、ものすごいおばあちゃん子でした。
そこでおばあちゃんと後から駆け付けた両親は医者から無情な宣告を受けました。
『手術で処置はしましたが今夜がヤマです。助かっても重い脳の後遺症が残るでしょう。』と‥
しかし、ヤマと言われた男の子は1ヶ月、2ヶ月と持ちこたえていました。ただ、意識は戻らず、おばあちゃんは毎日毎日面会時間ギリギリまで病棟で過ごし、意識のない孫の手を握っては、語りかけ、歌を歌い過ごしていたそうです。
数カ月後‥
ある朝突然男の子は目を開け、辺りをキョロキョロ見渡し、意識を戻しました。
友達もナース先輩も、憔悴しきって疲れていたおばぁちゃんに、一刻も早く喜んで貰いたかったそうで、すぐに連絡したそうです。
しかし、最初に駆け付けたのは母親でした。もちろん大喜びでしたが、
『ねぇおかあさん、なんでなんよ‥まーくん目ぇ覚ましたで。楽しみに待ってたんちゃうのぉー‥‥』
っというと号泣してしまいました。
ナース先輩が母親に、『本日はおばあ様はご一緒ではないんですか?』と聞きます。
少し落ちついたのか母親は、『それが‥』といいにくそうに廊下に引っ張っていったそうです。
『実は母は今朝布団の中で寝ている状態のまま亡くなりました。
ずっと孫の事だけを考えて、自分が身代わりになれるもんならこんな年寄りの私の命に代わってでも助けて欲しいと毎日仏壇にお願いしてました。
ねぇ、看護婦さん、そんな事ってあるんですか?
お母さん、まさかホントに身代わりになっちゃったんですか?
でも、孫の回復を誰よりも楽しみにしてたのに‥‥まさかそんな‥』
と泣いてしまいました。
おばあちゃんは、今朝布団の中で冷たくなっていたそうです。
その顔は微笑みを浮かべ、幸せそうにも見えたとの事‥
それからしばらくして‥
男の子は話せるまで元気になったそうです。
ただ、ときどき1人でもキョロキョロし、ニコニコ笑うようになったそうです。
スタッフが『まーくん、楽しそうやね。』と訳を聞くと‥
『あんなぁ、おばあちゃんがね、ニコニコして笑って見てるんやで。
まーくんの悪いヤツは、やっつけたからもぅ大丈夫なんやて。
でもな、おばあちゃん、ピカッて光ったりすんねん。もうすぐお出かけすんねんて。』
って言うそうです。
きっと、おばあちゃんは男の子をずっと見守り続けてるんですよね。
ちなみに男の子は、奇跡的な回復でその後無事に退院したそうです。
友達は、病院の先生の
『病院では、不思議な事も奇跡的な事も稀に起こる。
なんていっていいんかわからんケド‥、お婆さんはホントに孫がまさに命にかけても守らないかん大切なものやったんやろなぁ‥』
と言ってたのが忘れられないそうです。
絶望的な状況からある日意識を取り戻した男の子、
その日の朝に誰よりも回復を願う祖母が亡くなった事、
祖母の死を知らない男の子がある日祖母が近くにいる楽しそうにしている。
少しだけ脚色加えましたが、全て友達が体験した事実です。
長くなりましたが、拙い投稿をよんで下さりありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話