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中編4
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私が一番怖かったこと

今回は、私が現在の職業に就いてからの事を投稿させて頂きたいと思います(^-^)

どうぞ、お付き合い下さい。

依頼者の方から電話を頂いたとき、既に何かまずいと思っていたのです。

けれど、この職業に従事する以上、無下に断ることはできません。

とりあえずお会いしてお話をと思い、関西から青森まで来て頂くことにしました。

今思えば、関西にだってすぐれた方が大勢いらっしゃるはずなのに、わざわざ東北の、しかも未熟な私にお話が来るという時点でおかしいことだったのです。

依頼者の方は、そろそろ60にも足が掛かるかという年ごろの男性で、青森に着いたその当日に会いたいとのことでした。

私は彼の乗る飛行機を待ち、駐車場にいました。

少しすると、飛行機のエンジン音が聞こえてきたので、私は着いたのだろうな、と思いました。

車のエンジンをかけようと、鍵に手を掛けたその瞬間。

ぞくぞくぞくっ…

一気に背筋が凍りました。

瞬きができず、息が詰まったようになり、心臓の音だけがいやに響いているように感じます。

未熟とはいえ、20年以上の経験があるはずでしたが、あの感触は全く感じたことの無いものでした。

その感触が強くなり、ぞろぞろと出てくる人々の中に、おかしな空気の男性を見付けました。

その瞬間に、私は思わず目を凝らして見入ってしまいました。

なんてものを連れて歩いているのだろう。

それを目視した瞬間、もうどうにかできる気など少しもしませんでした。

彼が連れてきたもの、それが、怒り狂う神様だったからです。

もとの形が分からないほど肥大して、射殺してしまうのではないかと思えるほどの形相で男性を睨み付けていました。

彼はきょろきょろと辺りを見回していましたが、そのうちに私の視線に気付き、軽く会釈してみせ、こちらへ向かって歩き始めました。

今にも泣きだしてしまいそうなほどの畏怖が私の頭を占領し、がくがくと体中が震えました。

それは間違えようもない、本物の恐怖そのものでした。

彼が車の傍に立ったとき、もう彼を見ることなどできません。

「Aさん?…Aさんですよね?」

窓ガラス越しに、彼が話します。

その彼の声に混じって、

「くるな、くるな、やめろ…」

という火が激しく燃えているような音(声?)が聞こえてきます。

私はただひたすらに戸惑い、怯え、車の後部座席に乗ってくださるように促すのが精一杯でした。

もう秋も終わりに近く、薄寒い日でしたが、4つの窓をすべて開けて、無言のまま緑の多い場所まで車を走らせました。

同じ車内に居るというだけで、物凄い圧迫感があり、それ以上の圧力が私を押し潰そうとします。

車を停めると、すぐに飛び下り、

「何をしたのですか?」

尋ねました。

ほとんど泣き叫んでいたと思います。

男性はばつの悪いような顔をして、ぽつりと言いました。

「実は、森林地を切り開いて、アパートを建てました。

でも、地鎮祭も、お祓いも、きちんとやったんですよ。」

彼は明るいブラウンの鞄から、設計図のようなものと、そのアパートの周辺地図を取り出して、私に差し出しました。

2つを受け取り、まず設計図を見て、その周辺地図を見ました。

端から端まで、見られるところはすべて目を通すうち、あることに気が付きました。

「これは……」

急な脱力に、膝が地面に着きました。

「前の人も、その前の人も、そのさらに前の人も、みんなそう言うんです……」

私はもう泣いていました。

怖くて怖くて、すべての温度が無くなったように感じていました。

口も聞けず、動くこともできず、どうするべきなのか、考えもまとまりません。

ふと、曾祖母が私を抱き締めて、私の口から、

「…どうぞ、お帰り下さい、」

穏やかな声が聞こえた。

「そのアパートは、取り壊しなさい。それが建っている以上、どうにもならないでしょうからね。

それから、〇〇神社に寄付をして、すみません、すみませんと心から謝って、あなた自身が境内を掃除なさいな。」

男性はぽかんとした表情で、私を見ていた。

私自身もぽかんとしていた。

最後に、

「どうぞ、お怒りを御鎮め下さい…」

そう言って、私を抱き締めていた腕が消えた。

ぼうっとしていた男性が、はっとした表情になり、

「あ、あ、……」

と声を上げた。

「温かい、温かい…」

男性は膝を抱く様にして、雄叫びのような声を上げて泣いた。

依然として畏怖の念はあるものの、もう、前のような圧迫感は感じない。

あれほど肥大して、邪悪な気を放っていた神様も、その姿さえ見えなかった。

実は、あのアパートは神様の通り道を塞いでしまっていたのです。

確か、7階か8階部分ではなかったでしょうか。

私は関西在住ではないので、彼が関西に帰ってからのことは何も聞いてはいませんが、お正月にはお手紙が届きました。

どうもお元気そうで、最近は何もかも元の通りなのだとか。

ただ、〇〇神社には毎週通っていらっしゃるそうです。

最後までお付き合い下さり、ありがとうございました(^-^)

怖い話投稿:ホラーテラー あおもりんごさん  

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