Meet a chiled
レンガ造りの家々が建ち並ぶ孤島の集落…
ニックとビリーはそこへ足を踏み入れた。
「いや〜、酷いなこりゃ…」
ビリーは、外壁がえぐれ、所々屋根の陥没した無惨な姿を晒す家々を見ていた。
「確かに酷いな。」
「トランス○ーマのロボットでも攻めてきたのか?」
「アホな事言ってないでさっさと任務を片付けるぞ。」
「了解。」
2人は集落の舗装されていない砂利道を歩き出した…砂利道をよくよく見ていると、茶色い砂利の上に僅に赤黒い何かが飛び散った様な痕があった。
「なぁ、ニック。これ、血の痕じゃねぇか?」
「……だな。おそらく、この集落の人間達のものだろう…」
「お前、ホントに冷静だな。普通ならこんな派手にぶっ壊れた家を目の前にして、その上血痕まで出てきたら少しは焦ったり取り乱したりするもんだぞ。」
「生憎、そういうのには慣れててな…」
「ニーナが言ってたぜ、お前には可愛げが無いって…」
「…要らん世話焼きだ。」
「へいへい…」
そんな会話をしていた2人の足がある一軒の家の前でピタリと止まった。
「あやしいな…」
「ああ、なんか匂うぜ。
当たり前だが…行くよな、相棒?」
「勿論だ。」
2人が踏み込んだその家は、集落の他の家に比べて損傷の度合いが低かった。
これまでの経験から2人はこういう場所に生き残りが居る可能性が高い事を知っていた。
「ビリー、家の中の写真を撮ってくれ、俺はここで何が起きたのかを探ってみる。」
「わかった。何か見つかったら教えてくれよな、相棒。」
「ああ。」
ニックとビリーは二手に別れて家の中を調べ始める。
5LDK程の小さな間取りの家の中には、不気味な静けさと戦慄の光景が広がっている。
家の中は辺り一面血の海だった。散乱した家具、床に落ちてガラスが割れた写真立て、洗い物がそのままになっているキッチン…
そして、立ち込める独特の腐敗臭は近くに死体が在ることを2人に知らせている。
「おい、ニック!2階に上がってきてくれ!」
ビリーの大声が家中に響き渡る。
「…何か見つかったか?」
「これを見てみろ…」
「…?小さな子供の写真か…これがどうかしたのか?お前の好みなのか?」
「アホか!!…違う、それじゃねぇ。その下のキャビネットだよ。」
ビリーが指差すキャビネットの、僅に開いた隙間から人の手のような物が微かに覗いている。
「確実にこの腐敗臭の大元だな…」
そう言ってニックはおもむろにキャビネットの扉を開いた。
「うぅ、…何だこりゃ!?」
キャビネットの扉が開け放たれた瞬間に、液状化しかけた女の死体と、さらに強い腐敗臭が2人を襲った。
「うぉ…。この仏さん、既に液状化が進んでるぜ、いつからここに入ってたんだよ…」
「酷い臭いだ。」
「まだ辛うじて人の形をしてるが…ひでぇぜ、こりゃ…」
そそくさと写真を撮り2人は部屋を後にした。
一通り家の中の調査が終わり、ニックが指令部に途中経過の報告をしようと、無線機に手をかけた時…
「ウォォォォオ…!!!!」
凄まじい悲鳴がニックとビリーの耳に届いた。
「何だ!?敵か!?」
「分からん。だが、俺達以外の誰かがこの集落に居るようだ…」
「ニック、んな他人事みたいに言うなよ!あの叫び声の主に襲われるかもしれないんだぞ!?」
「一応…銃のセーフティは解除しておこう。」
「…だな。用心に越したことはないからな。」
2人はセーフティを解除したG36サブマシンガンを小脇に抱え、何かあった時にすぐ対応出来る体勢をとった。
家の外に出て、辺りを警戒する。
「クリア。」
ニックがビリーに小声で伝える。
「こっちも平気だ。」
2人は安全を確認して、集落の中を最初よりも警戒しながら進んでいく。
…と、そんな2人の耳に子供のすすり泣く声が聴こえてきた。
「ビリー、聴こえたか?」
「お前にも聴こえたって事は、こりゃ俺の空耳じゃねぇんだな。」
2人は声のする方へと足を進めた。
家と家の間の狭い路地…
声はそこから聴こえている。
「お〜い!!誰か………っ!?」
「ビリー、やたらと大声で叫ぶな。声の主が無害だと分かってる訳じゃないだろ。」
「……んな事言ってもよ…」
路地の奥に重なっていた木箱が音を立てて崩れた。2人は真剣な顔つきで銃口を木箱の後ろの人影に向けた。
「助けて!!」
「…!?な、こ、子供!?」
「助けて、怪物が僕を探してるんだ。捕まりたくないよ…イヤだ、イヤだよ…」
2人の前に突如現れた子供は完全にパニックに陥っていた。
「おい、とにかく落ち着け。泣いて喚いても怪物にこちらの居場所を教えるようなものだぞ…」
「ニック!そんな言い方したら可哀想だろ!?もっと優しく言えねぇのかよ!?」
「……女、子供はどうにも苦手でな。ビリー、お前に任せる。」
「よし、見てろ。泣く子供はこうやって泣き止ませるんだ…
ほぅら、僕〜、おじさんがアメあげるからいい子にしようね〜」
ビリーのこの台詞に子供は泣き止み、ニックは固まった…
「ビリー…お前、今、物凄く危ない人物に見えたぞ…」
「うるせぇ!お前が出来ないってから、俺が泣き止ませてやったんだそ!?
せめて、感謝の一言もあったっていいだろ!?」
子供は目を丸くして唖然とした表情で、ニックとビリーのやり取りを見ていた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話