これは五年くらい前に僕がカラオケ屋の店長をしていた時の話です。
その日はいつもと同じくらいの忙しさで、僕はフロントで受付をしていました。
夕方くらいになり、昼の安い料金が終わって高校生やらお年寄りが続々と退店していきました。
お店が暇になり、そろそろアルバイトに任せて事務所でくつろごうと思って矢先に、一人の若い女性が来店してきました。
ちょっと暗い感じのその女性をAさんとします。
(会員証で名前見たので)
Aさんは料金の高い夕方から一人でやってきて、ルーム料金(飲み物別料金)で入室したので、珍しいと思って覚えてました。
一人でカラオケ楽しむ人は大体昼間に来るのです。
Aさんを部屋に案内し、予定通り事務所でしばらく、くつろいでいると…
プルルル!
と電話が鳴りました。
ここからは記憶にある限りのやり取りを再現します。
僕「お電話ありがとうございます!カラオケ○、△店です!」
?「すいません!カラオケ○ですね!?」
僕「はい!そうですが?」
?「Aが部屋で自殺しようとしてます!早くとめて下さい!」
僕「!?」
僕「失礼ですが、どちら様ですか?」
?「私は凸市に住むAの友人のBです!」
僕「凸市の方ですか?」
B「今、Aからそちらのお店の部屋で自殺するとメールがありました!」
電話からの真剣で鬼々迫るような声で、冷やかしやイタズラでは無いと確信し、
僕「!わかりました」
僕「確認しますので切らずに話て下さい!」
僕は電話の子機を持って、通話しながらAさんの部屋に向かいました。
その間にBさんから説明を受けました。
1、Aさんは精神病で最近まで入院していた事。
2、退院後、睡眠薬や精神安定剤を処方されていたが、それを今日まで服用せずに貯めていた事。
3、そしてそれらを大量に飲んで自殺しようとしてる事。
Aさんの部屋に行くと、Aさんは既にぐったりとテーブルにうずくまっていました。
僕は思わず「うわ!」と悲鳴を漏らしました。
テーブルの上には大量の薬のカラが散乱…
カラオケ画面には悲しい曲が流れていて、予約も全部悲しい曲がびっしり!
急いでアルバイトに救急車を呼ぶよう指示し、僕はBさんにどうしたらよいか?電話で指示を受けました。
まず、Aさんの口に指を入れて少しでも薬を吐き出させる事。
水を飲ませると薬が吸収されるので、絶対に水を飲ませない事。
僕は部屋のごみ箱に吐かせようと手を伸ばしました。
すると!
ごみ箱の中に更に大量の薬のカラ!!!
思わず
「マジかよ!!!」
って叫びました。
本当に大人がお腹いっぱいになる量の薬を飲んだようです。
とにかくAさんの口に指を入れ、ごみ箱に吐かせました。
A「おぇ!オゥエェ!」
彼女の口から消化されていない大量のカプセルが、
噴火口のマグマの様に流れ出ます。
突然!
ここで予想外の出来事が!
何と吐いたカプセルが気管に詰まり!
呼吸困難に!
僕「救急車はまだか!!」
バイト「まだっす!」
もう涙目です…
何?これ?業務上過失致死か!?
チクショー!死なれてたまるか!
人口呼吸を試みました。
A「ぼぇ!!ゲホ!」
運よく詰まりが取れて、何とかAさん生還!
20分程の救急活動を経て、ようやく救急車が到着。
僕は救急隊員の指示により、彼女が飲み終えた薬のカラと吐き出させたモノを袋に詰めて
病院まで付き添いました。
病院に着いて待合室で自失呆然としていると、
同じ△市に住んでいる彼女の友達が沢山駆け付けてきました。
話を聞くと、今回の様な事は一度や二度では無く。
何度も繰り返しているとの事。
好きな人に死なれた事で心を病んでしまったそうです。
その後、何とか彼女は一命を取り留め、今では元気に暮らしています。
途中から
Aさんを彼女と変えたのは
今の僕の奥さんだからです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん
作者怖話