短編2
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【禁】の札

友達と二人で肝だめしに行った時の話です。

その場所は昔診療所だったと言う廃墟で、見た目はボロボロの木造一戸建てだった。

いかにも何か出そうな雰囲気に二人とも内心びくびくしながらも強がってその廃墟に入って行った。

一通り廃墟の中を見て回ったが、心霊現象らしきことは何も起こらず、がっかりしたようなホッとしたような気分で、二人で廃墟の中にあった椅子に座り、タバコをふかした。

「なんだよ…見かけ倒しでなんも起きないな…」

俺が友達に話しかけると、友達は黙りこんで何かをじっと見つめていた。

そして廃墟の入り口付近を指差しながら言った。

「おい…あそこになんか貼ってあるぜ。」

俺は友達が指差す方を見てみた。

そこには、【禁】と書かれた古ぼけたお札のような物が貼られていた。

古ぼけて他の字は見えなかったが【禁】という文字だけは、はっきりと分かった。

「うわ…あれはヤバそうだね…」

俺が言うと、友達がそのお札に近づいて行った…

そして乱暴にそのお札をはがしたのだ…

友達ははがしたお札をしばらく見ていたが、次の瞬間、俺に向かって大声で叫んだ。

「ヤバい!タバコを消せ!!」

俺は友達にそう言われすぐにタバコを消した。

すると友達は俺の方に走ってきて、はがしたお札を見せてきた。

そこには【禁】の下に古ぼけて消えそうな文字で【煙】と書いてあったのだ…

「ここは禁煙だぜ」

友達が得意そうに俺を見つめる。

「もう…やられたな…」

俺が言うと、友達は笑いながら

「禁煙・禁煙・禁煙・禁煙…」

と言い続けた。

「分かったよ、しつこいなあ…」

俺が言うと、友達の様子が少しおかしい感じになってきた。

「禁煙・禁煙・きんえん・きんえいいん・キエエイイン・キエエイン・キエエエエイン・キエエエエエエ…」

体がマネキンのように固まり、ビクンビクン飛びはねていた…

俺はとっさに友達を抱き抱え廃墟から逃げ出した。

廃墟から出た後も、友達はしばらくマネキンのように固まっていた…

そしてその後、俺の部屋で死んだように寝てしまった。

その日以来、友達はピタリとタバコを止めた。

全くタバコを吸いたくならないらしい。

それどころか人のタバコの煙が臭くてたまらないと言っていた。

タバコが値上がりする前に、もう一度あの廃墟に行って見ようかなと思う今日この頃だ…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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イメージしてみると意外と滅茶苦茶怖い

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