つづき
おの吉の家の前に、一人の女の人が立っていました。
「雨で、困っておいでじゃろう」
気だてのいいおの吉は、女の人を家に入れてやりました。
女の人は、お雪という名でした。
おの吉とお雪は夫婦になり、かわいい子どもにもめぐまれて、それはそれは幸せでした。
けれど、ちょっと心配なのは、暑い日ざしをうけると、お雪はフラフラと倒れてしまうのです でも、やさしいおの吉は、そんなお雪をしっかり助けて、なかよくくらしていました。
そんなある日、はり仕事をしているお雪の横顔を見て、おの吉は、ふっと遠い日のことを思い出したのです。
「のう、お雪。わしは以前に、お前のように美しいおなごを見たことがある。お前とそっくりじゃった。山でふぶきにあっての。そのときじゃ、あれは、たしか雪女」
する突然、お雪が悲しそうにいいました。
「あなた、とうとう話してしまったのね。あれほど約束したのに」
「どうしたんだ、お雪!」
お雪の着物は、いつのまにか白くかわっています。
雪女であるお雪は、あの夜の事を話されてしまったので、もう人間でいる事が出来ないのです。
「あなたの事は、いつまでも忘れません。とても幸せでした。子どもを、お願いしますよでは、さようなら」
そのとき、戸がバタンと開いて、つめたい風がふきこんできました。
そして、お雪の姿は消えたのです。
おしまい
怖い話投稿:ホラーテラー 魚群さん
作者怖話