なんだ、簡単にわかったんだなと思って、押し入れから出ようとして、不思議なことに気づきました。
押し入れはピッタリしまっているのに、弟はなぜ僕がここだとわかったのでしょうか。
〈もしかしたら、おびき出す作戦か?〉
そう思い至って、しばらくじっとしていることにしました。
すると、
「ずるい!早く出てこい!」
と、弟が叫びます。
こうなったら僕も、絶対出てやるものかと、膝を抱えました。
しかし、弟は相変わらず「見つけた!」を繰り返すばかり…。
狭い場所に窮屈な姿勢でうずくまっている僕は、だんだんイライラしてきました。
見つけたのなら、押し入れを開ければいいのに、そんな気配はまったくありません。
そんな状態のまま、15分位が過ぎました。
弟があまりにもしつこく「出てこい!」を繰り返すので、僕はついに押し入れから出ていきました。
すると、押し入れの反対側にあるタンスの前に弟が立っています。
弟は、こちらに完全に背中を向け、まるで綱引きをするように体を動かしていました。
そして、
「出てこい!見つかったんだから、早く!」
と、繰り返しています。
僕はそっと押し入れから出ると、弟の斜め後ろに立ってみました。
すると、そこに奇妙な光景があったのです。
タンスの中から白い手が伸び、その手を弟が一生懸命引っ張っていたのです。
「誰だよ、それ」
僕が声をかけると、弟はびっくりして振り向き、そのあと自分が握っている白い手を放して、泣きだしてしまいました。
その瞬間、白い手もタンスの中に引っ込んでいきました。
僕達は家を飛び出し、泣きながら両親の帰りを待ちました。
永遠にも思える長い時間が過ぎ、やっと両親が戻ってきました。
そして、タンスの中を全部調べてくれたのですが、まったく異常はなく、洋服が詰まっているだけでした。
両親は「そんなバカなこと…」といい、結局この話は信じてもらえませんでした。
しかし、僕と弟ははっきり見たのです。
駄文失礼しました。
怖い話投稿:ホラーテラー clearさん
作者怖話