中編7
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忌み火 1

■シリーズ1 2 3 4

これは10年くらい前、僕が中学生の頃の話です。

今は遠く離れた場所に住んでいますが、僕が生まれ育った田舎は360度の山に囲まれた閉鎖的な村でした。

そして小高い山の頂上に小さな神社があったんですが、そこでの参拝は禁止され普段から立ち入る事も禁じられていました。

僕は都会に出るまで神社がお祭りや行事を行うことを知りませんでした。

そんな僕の出身地の村では「禁忌」とされるモノがありました。

「大晦日の夜は神社のある山に絶対入るな」

これは小さい頃から親に言われ続けた事でした。

毎年、大晦日の夜には神社のある小さな山が燃えるように赤く光ってました。

そして毎年、僕ら子供は夜9時には寝るように親から厳命されていました。

ある年です。僕は年が明けてすぐ都会へ引越すことになっていました。

そこで記念に同級生のTとNと3人で、大晦日の夜に神社の山に入ることにしました。

TとNも小さい頃から光る山で何が行われているのか気になっていたそうです。

大晦日の夜です。

待ち合わせ場所だった中学校の前に行く為に、家族の目を盗み家を抜け出しました。

雪はあまり積もっていなかったものの、神社の山がひときわ光っていました。

中学校に着くとTとNが先に着いて待っていました。

T「よう!」

N「おせーから!」

悪ガキの二人は、家を抜け出すことに慣れていました。夜中に抜け出してよく3人でタバコを吸ったりしていたんです。

僕「それにしても早すぎだろ」

そういうとTは不思議な顔で言いました。

T「だって大晦日は大人達はみんなどっか行くだろ」

僕「え?僕ん家はみんな居たけど」

N「お前ん家だけ仲間外れにされてんじゃない?今年で出て行くし」

僕は妙な違和感を感じたものの、気にせず3人で神社の山に向かって歩き出しました。

山の入り口付近に着くと、僕たちの視界に沢山の大人達の姿が映りました。

T「やべ!俺みつかったら親父に殺されるよ!」

N「正面はダメだわ、裏から登ろうぜ」

そして僕たちは裏側に回り、真っ暗な山の斜面を登りました。

登りだして15分くらいで、頂上の神社が見えてきました。

僕「神社が見えてきた!」

神社の境内には、村の大人達が大きなキャンプファイヤーの様な焚き火を囲んでいました。

T「おー初めて見た!」

N「俺の親父もいる」

僕たちは林の藪の中に身を潜め、神社の様子に見入っていました。

村の大人達が、次々と正面の石段から登ってきています。

全員が手に松明を持ち、頂上についた人から松明を焚き火の中に投げ込んでいました。

その様子を見た僕らは少しガッカリしながら、ヒソヒソ会話をしていました。

N「なんだ、こんなもんか」

T「ここまで苦労する意味なかったな」

僕「もう飽きたな、そろそろ帰ろう」

僕たちが帰ろうとした時です。

T「おい、あれ見ろ」

小さく鋭く息を吐き出すような声でTが僕らを呼び止めます。

N「なんだよ?なんかあったのか?」

僕らはTが指差す先を凝視しました。

僕「ぉぉぉぉマジかよ」

N「きたよコレ」

T「っし、ちょっと静かにしろよ」

真冬の寒い時期だというのに、薄い白着一枚の半裸の女の子が、板に乗せられ大人達に運ばれてきました。

僕らと同い年くらいの女の子は口に猿ぐつわをされ、縄で板にグルグルと縛りつけられていました。

僕「うちの女子じゃないよな?」

T「違う町の巫女さんじゃない?」

N「おい下着はいてないぞ!」

僕・T「マジで!?」

童貞丸出しのスケベ心から、僕たちは食い入る様に女の子を見ていました。

すると、鎧武者のような衣装を着た神主が現れ、祝詞のようなものを読み上げています。

T「神主この村の人じゃないな」

僕「見たことないよね」

N「あの服かっこいいわ」

くだらない事を喋っていると、石段の方から3人の巫女さんがやってきました。

村の大人達に何かを配っています。3種類あるようで、大人達は頭を下げながら巫女からそれぞれ何かを受け取っていました。

そして先ほど板に縛りつけられていた女の子が、境内の中央に運ばれてきました。

巫女の一人が女の子の猿ぐつわを取ります。

次の瞬間、女の子が絶叫しました。

女の子「いやああああああ!助けてー!助けてー!」

その声を聞いたNが言いました。

N「あれ演技だろ、こういう儀式なんじゃない?」

僕とTは黙って頷きました。

それ以外の可能性を考えたくなかったんです。

Nの一言で僕たちの恐怖は一度OFFになりました。

まるでテレビを見るかのように、僕たちはその光景を眺めていました。

もう一人の巫女が、木の容器に入った水を女の子に浴びせます。ジャバッ!

女の子「やだあぁあ!つめたいいい!」

T「うわっ、寒そう…」

N「冷水なわけないって」

僕「おい、静かに!」

神社の境内にいた大人達が、わらわらと動き出し薪き火の前に2列に整列しました。

よく見ると焚き火の中から、棒のようなものが飛び出ていました。

先頭の大人達がその棒を焚き火から引き抜きました。

姿を現した棒は全長3メートルくらいの長さ、焚き火で真っ赤になった灼熱の鉄の棒でした。

2列になった大人達の8名が、その棒を持って女の子に近づきます。

女の子の両側に居た巫女が、女の子の両足を片方ずつ掴み強制的に開きました。

神主が女の子の頭の後ろから、ブツブツと何かを唱えています。

女の子は泣き叫んで命乞いをしていました。

僕たちは息を殺しその様子を見ていました。

次の瞬間です。

大人達はその棒を女の子の股間に突き刺しました。

「ぎいぃやあああああああああああああああああ」

女の子がこの世のものとは思えない声で絶叫しました。

ジュワジュワ焼ける音と、人間の肉のが焼けていく悪臭が辺りに漂いました。

僕「おぇ、おぇええ」

T「うっ・・・」

僕とTは衝撃的な光景と、強烈な悪臭で吐き気に襲われていました。

しかしNは「これはヤラセだから」と平静を保ちながら儀式を見ていました。

女の子の絶叫は続きました。

大人達は力任せに真っ赤に焼けた鉄の棒を、どんどん女の子の体の奥へねじ込んでいきます。

遠くから見ても、鉄の棒が女の子の中にどんどん入っていくのがわかりました。

そして女の子の絶叫が少しずつ力無いものへ変わっていき、ピクピクと痙攣していました。

恐らく女の子が死ぬ直前だと思います。神主が刀を抜き、勢いよく女の子の首を切り落としました。

それを見た僕とTは恐怖のあまり失禁していました。

金縛りにあったかの様にその場から全く動けません。

横で見ていたNは「人を殺すわけないだろ」と余裕の表情で僕らをバカにしていました。

大人達は女の子の死体を木の棺桶にいれ、神社の建物の中へと運んで行きました。

全ての儀式が終わったようで、大人達は神主や巫女たちに一礼しながら帰っていきました。

1時間くらい経ったころ、境内には誰もいなくなりました。

僕とTは泣きながら、その場から一歩も動けませんでした。

Nに起こされ、ようやく自分の足で立てるくらいに落ち着きを取り戻した時です。

恐怖に凍りつき、まともに歩けなかった僕らを励ますためにNが言いました。

N「大丈夫だって!あの女の子は人形かなんかだって!」

しかしTはガタガタと震えながら正気を失ったように

T「ころされたころされたころされた」

と繰り返して呟いていました。

僕も震えが止まらず、上手く喋れない状態でした。

それを見かねたNが「俺が確かめてやるからついてこいよ」と僕らを引っ張り、神社の建物の中に連れていきました。

女の子の死体が入った棺桶を目の前にして、僕とTは「これ以上近づけない!」と少し離れた場所でNを見守っていました。

さすがのNも恐る恐る、ゆっくりと棺桶の蓋を開けていきました。

少し開いたところで、棺桶から猛烈な悪臭が放たれました。まるで、全ての生ものを腐らせたような悪臭でした。

今まで我慢していた吐き気が一気に押し寄せ、僕は嘔吐しました。

Nが棺桶の蓋を全部開けた瞬間、中から夥しい数のハエが飛び出してきました。

ハエの塊は僕たちに襲い掛かり、体のあらゆる穴から侵入しようとしてきました。

ブブブブブブブブブブブブ「わあああああああ!」

襲われたショックで僕とTは正気を取り戻しました。

僕「やばいって!逃げろ!」

T「おい!N!逃げるぞ!」

逃げながらNに向かって叫びましたが、Nは棺桶の中を見たまま動きませんでした。

急いでNの元に駆け寄り、今度は僕とTでNを引きずり、外に逃げ出しました。

ガタン!

その音に振り向いた時、僕は見てしまいました。

棺桶の中から腐りかけの手がでて、自ら棺桶の蓋をしめるところを…

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怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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