「…で何処から来て何処へ行くんですか?」
船を漕ぐ者は答えた。
『これは何処から来たのかさえ解りません、ましてや何処へ行くかも解りません』
「では質問を変えましょう。目的は?」
船を漕ぐ者は霧が立ち込めた海原を眺めながら答えた。
『それははっきりしてます。とても微細な物を渡す為です』
「誰にですか?」
船を漕ぐ者は記者の顔を見つめると言った。
『次の者です』
記者の目の前で次の者にそれは渡された。そして船は深い海に沈んでいった。彼は見事役目を終えたのだ。
記者は思う。この営みに対する答えなどないのだと。記者は海原に花を手向けて自分も船を漕ぎ出した。
怖い話投稿:ホラーテラー せってんさん
作者怖話