【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編3
  • 表示切替
  • 使い方

自殺と友

気付けば、あれからもう10年以上になる。

私が、中学二年の頃の話。

夏休みが終わり、まだ残暑のある二学期の始め…

同じクラスの女子Nが、自宅で首を吊り自殺した。

まだ幼さの残る私にとって、それはあまりに衝撃的な事だった。

Nとはクラスだけでなく同じ陸上部に所属していた為、よく話す仲だった。

そんなNに、彼氏ができたと聞いたのは一年生の冬の事だった。

付き合っていたのは、同じクラスの男子K。

そのKもまた、私とは良く話す親しい仲だった。

まだまだ幼かった私は、よく二人を冗談でからかったりもしていたが。

からかう反面、私はNに密かに恋していた…

そんな事情もあり、突然Nが自殺をしてしまった事は私にとって驚きだった。

後になって思い返してみれば、その以前からNの様子はおかしく、予兆のようなものも確かにあったのだ。

しかし、何もしてあげられなかった事が深く悔やまれた。

葬儀も終わり、放課後Kと学校で話していた。

「Nの事…何か、心当たりはないのか?」

Kはしばらく黙っていたが…やがてポツリポツリと話しだした。

…ちょっとした喧嘩から嫌気がさしたKは、Nの事を冷たくあしらってしまった。

「まさか死ぬだなんて思わなかったんだ…」

Kはまだ恋愛を知るには幼く、Nはあまりに急ぎすぎた結果の悲劇だったのだろう。

今ではそうした事情も理解できるが、その頃の私が理解するにはまだ早すぎたのかもしれない。

Kの話を聞いた私は、意識がプツリと途絶え…

気付くと私は、Kの胸ぐらを掴み殴っていた。

Kは抵抗するでもなく、ただ黙って殴られていた。

やがて正気に戻り「ごめん」と謝る私を残し、Kは静かに私の前から去っていってしまった。

何とも言えない思いで、私の心は冷たくなり果ててしまっていた。

人の死……

恋心………

それまで特に意識もしなかった事が、自分に重くのしかかってくる。

毎晩Nの写真を眺めては、一人ひたすら泣いていた。

そして、それから徐々に私はおかしくなっていた。

K死ねK死ねK死ねK死ねK死ねK死ねK死ねK死ねK死ねK死ねK死ねK死ね………

気付くと、ノートのページ全面に書きなぐられている。

まったく記憶がなかった。

私自身Kに怒りさえ感じれど、恨む事などなかった。

なのに、こんな事を…

自分の意思以外のものに行動を支配されていく…

そんな感覚を覚え、恐怖に震えた。

ある夜には、部屋のMDコンポが突然鳴りだした。

Nが好きで良く聴いていた歌手の曲。

明るい感じの曲のはずが、まるで別物のように暗い曲調となって響いていた。

眠ると夢の中で、Nが首に縄をかけるシーンや、私がKの首をしめるシーンが…

(やめろ…私はそんな事を考えてはいない!)

誰にともなく、頭の中で必死に叫んだ。

しかし他にも悪夢や怪現象は続き、無くなることはなかった。

そんな事が続き、私は心底疲れ果てていた。

気分も憂鬱で、何をしても楽しくない。

(こんな事ならばいっそ…)

そう考えた時もあった。

そんなある日のこと。

私はある覚悟を決め、Kと話していた。

今まで一人で抱えていたNへの思いや今までに起こった事を全て打ち明けた…

Kは黙って全て聞いてくれた。

そして一通り聞き終えると、その口を開いた。

Kもまた、Nが死んでからというもの罪の意識に悩まされていた…

毎日のように悪夢を見ては、私と同じくおかしな現象を見てきたと。

そして私と同じく、悲しく寂しかったのだ…

そのあと私とKは、一緒にNの家へ行き線香をあげてきた。

思えばNが死んで以来、はじめてKと心から通じあえた気がした。

「そういえばNが生きている頃は、よく仲良く遊んだよな…」

帰り道を二人歩きながら、ずっと懐かしく語り合っていた。

それからというもの、私とKに悪夢や怪現象は一切なくなった。

今でもKとはよく親しくしている。

「Nも、今思えば優しい子だったよな……

自分が死んで、俺達がぎこちなくて寂しかったのを見ていたくなかったのかもな…」

ぶっきらぼうなKには似合わないセリフだったが、それに私は黙って頷いた。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

Concrete
コメント怖い
0
1
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ