10年前の2月の出来事。
子供と散歩に出かけた。
まだ1歳の我が子はベビーカーの中でいい子にしていた。
横断歩道で信号が変わるのを待っていると
2月だというのに薄着のお婆さんが歩いていた。
気になりつつ
再度信号機を見た。
そして我が子を見た。
愛しさでいっぱいになる。
その時
「ゆう子…?
…ゆう子か?
ゆ う 子〜〜!!!」
と聞こえたかと思うと
お婆さんが腰をまげたまま信じられない速さで走ってきた。
私は呆気にとられ
お婆さんを見ていた。
瞬時にお婆さんが向かっている先がベビーカーということに気づいた。
私は必死で我が子を守ろうとしゃがんだ。
お婆さんは我が子と私のすぐ後ろに来て
我が子に手を伸ばした。
「ゆう子。ゆう子。めんこいゆう子。ゆう子。ゆう子。どこ行くゆう子。ゆう子。ゆう子。。。。
…おうちに帰ろう。」
私のすぐ後ろで囁いている。
お婆さんは我が子の手を握っていた。
いつの間にか信号が変わっておばちゃんが走って来た。
おばちゃん「お婆さん!!!こんなところで何してるん!?危ないから出たら駄目と言ったでしょう!!!」
お婆さん「いや…ゆう子が…。ゆう子が…」
おばちゃん「ゆう子は何年も昔に死んだでしょう」
そう言いながら私に申し訳なさそうな顔をし
「痴呆が入ってて。。」
と言い去って行った。
私はしばらく震えて動けなかった。
怖い話投稿:ホラーテラー もやしさん
作者怖話