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中編3
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銭盗り爺

私が大学生時代の話。

年が明けて、休みも終わろうかという頃。

何日か帰省していた実家から、一人暮らしのアパートに帰ってきた。

すると、私の部屋のドアのすぐ横…

ボサボサの頭で小汚い格好をした貧相な爺さんがそこにいた。

コンクリートの地面に、ボロボロの段ボールを敷いて寝転がっている。

私が近寄ると、こちらを見て「げへへ…」と下品な笑いを浮かべていた。

(こんな所に、浮浪者が迷い込んだか?)

私は何だか気味が悪かったので、放っておいて部屋の中へ入った。

次の日、大学へ行こうと部屋を出ると…

まだあの爺さんがドアの横に陣取っていた。

ちょうどその頃、アパートの大家さんが庭掃除をしていたので、あの爺さんについて話してみた。

すると大家さんは、まるで要領を得ないという顔でポカンとしている。

わざわざ爺さんの近くにまで連れてきても、あっけらかんとしたままだ。

どうやら、姿がみえていないらしい…

その間も爺さんはニヤニヤと笑いを浮かべてこちらを眺めていた。

今まで色々なものを見てきたが、あんなものは初めてだった…

(まあ、害はなさそうだし別に良いか…)

私はそのまま放っておく事にして、大学へと急いだ。

そして、それから何日か経った。

相変わらず爺さんはその場から全く動こうともしない。

ただ、その数日で少し変わったことに気づいた。

私は結構、金銭の扱いにはルーズなほうなのだが…

(あれ?財布の中の小銭が少し減っている…?)

正確に数えたりする事はないので結構微妙だったのだが、でも確かに減っている。

一度、小銭の枚数をすべて数えて紙にメモして眠ると、次の朝にはやはり少しばかり減っていたのだ。

…そうした事が何回か続いていた。

ある日、いつものように部屋に入ろうと、爺さんを見ながらふと思った。

(もしや、この爺さんの仕業なのか…)

そう考えて爺さんの目をじっと見つめてやると、少し気まずそうに目をそらしていた。

(こいつ、なんてせこい爺さんだ…)

その時、私の心中は複雑だった。

小銭がわずかに減る程度なので、大して怒る気にもならなかったのだ。

そもそも、どう対処したものかも良く分からなかった。

あの貧相で憎めない顔を見ていると、心なしか笑えてくるから不思議である。

結局は、面倒だしそのまま放置という形で落ち着くのだった。

しかし、それから一ヶ月ばかり経ったある日の事…

突然、何の前触れもなく爺さんは忽然と消えていた。

もう見慣れてしまっていた場所に爺さんがいなくなると、心なしか寂しく感じた。

爺さんの正体は結局分からずじまいだったが、私は貧乏神の類だったのではないかと踏んでいる。

今思うと、あの不憫な格好でなぜか憎めないような雰囲気は、ある意味ただならぬものだったと…

今でもあの爺さんは他の誰かの所に居座って、小銭をくすねているのかもしれない。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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