短編2
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T鉱泉の話

私の住むT県には心霊スポットとして有名なT鉱泉跡地があります。地元の人なら誰でも名前くらいは知っています。

詳細は知りませんが、経営に行き詰まった社長が首を吊ったという噂があるようです。

私も例のごとく、肝試しに行きました。

真夜中で暗く、建物の外観すらハッキリ見えない入口で、私は既に重苦しい空気に堪えられずリタイアしてしまいました。

他のメンバーも冬の寒さが手伝って早々に引き返して来ました。

メンバーのK君は、また別の人達とT鉱泉に行った話をしてくれました。

その時は誰もビビることなく、すんなり中に入り、

「ってか、余裕なんスけど」

と、皆で笑って、置いてあるソファーを蹴ったりしていたそうです。

階段を上り、何階だかの廊下を皆で歩いていた時、メンバーの一人の女の子が

「…ちょっと待って…

歩けない…」

とその場に止まってしまいました。

友達はふざけていると思い、そのまま行こうとすると

「ちょっと…私の足元見てよ………」

彼女の言うとおりに足元を見てみると、床から白く浮き上がった手がガッシリと彼女の足首を掴んでいるのがはっきり見えました。

「きゃーーーーっ!!」

「みんな!!待ってよ!!

お願いだから逃げないでーーっ」

泣き叫ぶ彼女を一人置いてメンバー皆、建物の外へ逃げてきてしまったそうです。

戻るに戻れず、警察に電話すると、よくあることなのか、警察は大して事情も聞かずにすぐにきてくれました。

「友達を置き去りなんて酷いことするなよ」

と警察に窘められながら手首の話をすると、警察は半笑いで

「早く友達の所に行ってあげなきゃな」

とK君らを連れて建物の中に入ったそうです。

パニックで何階だったかわからず、その子の名前を呼びながら上がっていくと、廊下にぼんやりと人影を見つけました。

警察が近づいていき、懐中電灯でその姿を照らすと…

その女の子は顔面蒼白で目をむいて足首から血を流し、立ったまま亡くなっていたそうです。

怖い話投稿:ホラーテラー T県民さん  

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