北カナダのモウンティ町から更に600km北に、そのエスキモー村はあった。
村人は大人と子供を合わせて、30人くらいの小さな村である。
1930年03月、猟師のジョー・ラベルが数ヶ月ぶりにその村を訪ねた時のことだ。人影もなく、静まり返った村の様子に彼は驚いた。
村の中を調べると、村人がひとり残らず消えていたのだ。
小屋やテントの中にある物は何も変わらず、火にかけてあったと思われる鍋の中身は、そのまま凍りついていた。
エスキモーの人々が防寒用に使っている、アザラシの毛皮でできた上着や、彼らが大切にしているライフル銃も、すべて残されたままだった。
木につながれていた数十頭の犬は、みな餓死していた。また旅に出る時に使うソリや、付近にあるアンジクニ湖の岸につないである彼らの船も、そのまま残されていた。
30人の村人は何処へ消えたのだろう。数ヶ月の間に、この村に何が起こったのか。
ソリも船も使わず、ライフルや上着すら持たずに、彼らはどうやって移動したのだろうか。
この不可解な蒸発事件は、未だに謎に包まれたままである。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話