とある田舎町に大学生二人組がいました。
ある日二人は“出る”と言われる地元の山の話を聞き、早速夜中に車で行くことにしました。
山といっても、麓から見るとなだらかな森で、夜中に来るとどこか不気味な空気が漂う場所でした。
『じゃ、入るか』
『そうだな』
と互いの意志を確認し、二人は木々の間を縫うように森の中に入っていきました。
森に入るとそこは外部の明かりはほとんど届かず、わずかな月明かりと頼りない懐中電灯のみが照らすだけです。
『確かに怖えぇけど、それっぽいのはないよなぁ』
『確かに…あれっ?オイ、あそこ…何かいないか!?』
一人がそう言うと、もう一人の大学生が彼の指す方向に懐中電灯を向けました。
『…いや、何もいないけど…』
と、懐中電灯を持っている大学生が言い終わろうとした瞬間、懐中電灯の光の輪のはずれに“ソレ”は現れました。
木の裏からこちら側をのぞき込むように…木の幹に右腕を回し、闇の中からこちらに迫り出すような格好で現れました。
暗くてよく分かりませんが女性、それも顔が土や血で汚れ、いかにも土中から這い出てきたかのような姿で…
『うわぁっっ!に、逃げよう!』
『はっ、走れっ!!』
二人は無我夢中で戻り、車に乗り込みました。
『とっ、とにかく!人のいる所へ!』
その状況に、二人はパニック状態で車を進め、目に入ったコンビニに入りました。
幸い、そのコンビニにはバイトと思われる高校生と客である中年の男性がいました。
二人は今さっき見たものをコンビニ内の二人に息も絶え絶え説明しました。
バイトは『見間違いだろう』と言い、取り合わなかったのですが、中年男性はその二人の大学生の話を真剣な面持ちで聞いていました。
『そうか…そんなものが…よし、私が確認してくるよ』
と言い、その男性は大学生の『やめた方が良い』という制止も聞かず、店の外に停めてある男性の車に向かいました。
『しかし、やばかった~!』
『ホント、心臓縮んだもん!』
『でもあのオッサン物好きだよなぁ…オレらが言えたことじゃないけど…』
『それに、店出るときに小声で「ありがとう」って。変なの』
‐翌日の新聞‐
〇〇市郊外の山中にて女性の他殺体発見。
死体は一度殴られた後埋められ、息のある被害者が自力で這いだした後、再び撲殺された模様。
犯人は依然不明
…じゃあ僕らが見たのは…
そしてあのおじさんの「ありがとう」は…
怖い話投稿:ホラーテラー うみんちゅさん
作者怖話