アイツが憎い…。
ずっとアイツがライバルだった。
アイツはいつも私を出し抜く。悔しいが見た目も性格もよく、世渡り上手とくる。
写真家としてデビューしてアイツは数々の賞を総ナメにし、先輩の俺は立場が無くなっていった。
私はアイツのHPに散々、あることないことまで書き込みをしたが、そんな事で何かが変わることはなかった。
こうして霊になってからも、この恨みは消えぬ。
かといって呪うことはできなかった。そもそも、『呪い』というものが本当にあったら、世の中の凶悪犯罪者はすぐに呪われて死ぬはずだ。
アイツの作品に写ってやろう。
恐ろしい心霊写真しか撮れない写真家は、相手にされなくなるだろう。
公園でアイツがカメラを構えている。
『今だっ!』
…………。
駄目だ、思わず癖でピースをしてしまった・・・
恐怖心を煽る写真にしなければならない。
定番ではあるが、長い黒髪に赤いワンピースにしよう。
次の日のあるスポーツ新聞の一面をヤツの作品が飾った。
『オカマの幽霊参上!!』
私に女装は向いていないことを知った。
元写真家として定番はプライドにかかわる。
あり得ない場所にあり得ないモノが写ってこそ、恐怖心を煽るのだ。
よし、これでいこう!
翌日、またあのスポーツ新聞の一面をアイツの作品が飾る。
『爆笑!!ありえない場所にケツだけの浮遊霊!』
インパクトを重視しすぎてしまった。
全身血だらけの男がたっていたら、さすがに驚くだろう。
真っ赤に夕暮れを染める太陽にかきけされた、私が写っていない美しい作品ができた。
初心にもどろう。
やはり、シンプルに限る。
顔面蒼白の男が立っていたらどうだろう?
モノクロの写真に普通のおっさんが写っていた。
っていうか、死んでる私が写っていることに気付いてくれよ。
頭にきた!
これ以上写真に写ってもアイツの知名度を上げるだけだ。
霊感からかけ離れた鈍感なアイツは、例え私が姿を現しても気付くわけがない。
最後の手段だ!
アイツに電話してやる!
メリーさんのパクりになってしまうが、俺の声を聞けばアイツも気付くだろう。
……………通じない。
電話料金払えよ!!
怖い話投稿:ホラーテラー ソウさん
作者怖話