またかよ…。
これで何回目だ?
泊まっている旅館の部屋に何度となくかかってくる電話。
しっかりとは聞き取れないが、女のすすり泣く声が聞こえる。
なんかいるんじゃないか?
フロントに言って部屋をかえてもらい、その晩は寝た。
「ただ〜いまぁ!あ〜、疲れた〜。」
二週間ぶりの我が家だ。
「おかえりぃ。ご出張お疲れさまぁ。」
台所から妻の声。
『ダァ〜。』
2才になる我が子の声も。
これぐらいになると、だんだん言葉も覚え始め、親としての楽しみも増える。
最初に覚えた言葉は
「パパ」だ。
妻が親バカの俺のために、子供に何度も言い聞かせ、教えたようだ。
「もっと遅い時間になると思ったから、まだ夕飯作ってるところなのよぉ、できてるのから先に食べてて。」
キャベツの千切りをしながら妻は言う。
『バァ〜。マンマ。』
「そっか、お前も食べたいか?(笑)」
子供を抱き抱え、食べ始める。
『パァパ、パァパ!』
子供が緩めたネクタイで遊び始める。
「ん?今日の味噌汁、ちょっと苦いなぁ。。」
『ドォ、ドォ』
「パパは馬じゃないぞぉ。」
『ドォック、ドォック』
「英語も覚え始めたのかぁ!さすが俺の息子だな!」
『チネ、チネ』
「そんな、英語あったかぁ?」
『パパ、ドク、チネ、チネ、パァパ』
箸を持つ手が震えはじめた。
妻の包丁の音も止まった。
『パパ、毒、死ね』
振り返った妻の笑顔は、歪んでいた。
そして、こう言った。
「不倫旅行、お疲れさま。そして、いってらっしゃい。」
怖い話投稿:ホラーテラー ソウさん
作者怖話