Aの新しい家に、あの時のメンバーで泊まりに行く事になった。
新しい家は、広くてキレイだった。
Aの家族は、親戚の家に行っていて明日まで帰らないらしいので、僕たちは夜遅くまでハシャイでいた。
くだらない話をしたり、ゲームをしたりと、楽しい時間を過ごした。
深夜になり、トイレに行ってから寝ようと部屋を出た。
トイレを済ませて、部屋のドアを開けたら
「ンククククッ…。」
と笑っている誰かと、すれ違った。
不可解な事に自分の真横を通って行ったのに、誰なのかがわからないんだ。
すぐに振り返ったが、誰もいない。
イヤな予感がした…。部屋の方を見て、人数を確認してみた。
(1・2・3・4…。全員いる…。
じゃあ、僕は誰とすれ違ったんだ?!)
「なぁ!今、誰か部屋を出たよな!」
…誰も返事をしない。
よく見ると、みんな放心状態だった。
訳がわからず、僕は必死に皆に話し掛けた。
「どうしたんだよ!!」
するとAが、消えそうな声で
A:「お…前らが…フ、フタ…開け…るから…。出…て来ちゃ…ったじゃない…か。」
(フタ?開けた?…!!)
僕の頭に浮かんだのは、あの壁の板だった。
アレは、蓋だったのか?…さっきAのヤツ、出て来たって言ったよな?何が?意味わかんねぇよぉ。
『あぁぁぁぁ!!』
僕がパニクってると、Bが叫び暴れ出した。
訳も分からず、僕はとりあえずBを抑えようとした。
Bの叫び声で、我に返ったA以外の友人も加わり、Bを抑えつけた。
僕は少し冷静になり、携帯でBの家に連絡して迎えに来てもらった。
Bの両親は、いったい何があったのか聞いてきたが、僕はモチロン、2人も記憶がなくて分からないと言っていた。
Aは、まだブツブツと呟いていた。
Bの両親が帰った後、僕はAに問い詰めた。
が、相変わらず「お前ら…フタ…出て…。」と繰り返すばかりだった。僕は、
「フタって、あの借家の板の事か?」
Aが黙った…。
「アレを俺とBが開けたから、何なんだよ?!閉めればBは、元に戻るのか?!だったら、あの借家に連れてけよ!!」
A:「…知らない。借家って何の事だ?」
(!!)
ついこの前まで住んでいたはずの借家を、知らないと言っている。
僕は確信した。
あの借家、無数の血の手形がついた板が関係してるんだと。
その夜、親に迎えに来てもらい、自宅に帰った。
翌日‐
自転車に乗って、あの借家を探した。
(板を元に戻そう。そうしたら、Bも元に戻るかも。)
が、一向に借家は見つからなかった。
通りかかった人に尋ねたが、誰も”そんな家はない”と答えた。
疲れたので、自販機でジュースを買って、近くの神社の石垣に座って休憩した。
すると、
「ンククククッ…クククク」
あの笑い声がした…。辺りを見回してみると、
神社の敷地にある木のてっぺんに、
着物を着て、ニヤニヤ笑っている男の人…、その首は今にもちぎれ落ちそうになっていた。
「うあぁぁぁ!!」
僕は、逃げ出した。
(何で?何でこんな訳わかんない目に合うんだよぉ…。)
途中で、幼稚園の時の園長を思い出した。園長の本業は、ウチも世話になっている和尚だ。
ワラをも掴む思いで、和尚の寺に飛び込んだ。
‐泣きじゃくり、今までの事を話すと、和尚は言った。
和尚:「今のお前に、怨念の塊が纏わり付いておる。恐らくB君という子にもな…。
その借家は、霊の吹き溜まりになっていて、誰かがその蓋の中に念を閉じ込めたのであろう。
…札か、経は無かったか?」
「何もなかった…。板の裏に手形があって、中は真っ白。」
和尚:「もしかして、A君とやらがすでに…、もしくは家族が…。」
和尚は、暫く考え込んだ後に
和尚:「よいか。お前が見た事、した事を人に話しては、ならん。怨念は、お前を透して相手に伝わっていく。
ワシが何とかしてみる。だから、人に話してはならんぞ!」
数週間後‐、
A君一家は、行方不明に。
B君は、どこか遠くの病院に入院したらしい。
和尚は、
死んだ…。
自宅の台所で、倒れていたらしい。
耳の鼓膜が破れ、耳が切り落ちた状態で…。
和尚…、僕が話したから死んだの?
ずっと聞こえるんだ。
あの笑い声。
Aのつぶやく声。
Bの叫び声。
今は、和尚の声も聞こえるよ。
もうキツイ…。
和尚との約束、守る自信ないよ。
みんな、僕と同じになればいいんだ…。
怖い話投稿:ホラーテラー 葉月さん
作者怖話