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中編5
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メシマズ【完全版】

…いやね、君んとこの嫁さんの話聞いて思い出したわ。

違う違う、容姿の話じゃなくてね、メシマズの話聞いてね、思い出した。

ごめんごめん、あぁーわかるわかる。

他人に言われるとね、気ぃ悪くなるわな。すまんすまん。

え?あーあー

思い出したことね。

俺の田舎のさ、親戚にメシマズのおばさんがいたのよ。

もうしばらく会ってないなー。

まぁー会えないんだけどね、今ね、獄中なんよ。

メシマズ刑?

違う違う。笑

だったら今ごろ、君んとこも僕んとこも、御縄だよ。笑

え?

しゃーないな、聞かせてやろうか。

遠慮すんなよ。

酒のつまみには…

ならないかもな。

あぁー分かった分かった。

おばさんはな、あー、Nさんって言うわ。

Nさんはな、早くに旦那さん亡くして、女手一つで3人の息子を育てたのよ。

けどな、3人が3人、二十歳になった途端おっちんでしまったのよ。

一人目は飲酒運転による事故。

二人目は自殺。飛び降りやわ。

三人目も自殺。同じく飛び降り。

年子の三兄弟やったから、当時は「また…」って空気が流れてたのを子供ながらに覚えとるな。

あったよ、子供のころぐらい。笑

一番最初の葬式の時、小6やな。

でな、毎年毎年の御香典より、みんなを憂鬱にさせることがあったのよ。

Nのメシマズ。

なんもうまなかったな。

白飯すら。

でも葬式の飯は、みんなNがつくんのよ。

「大丈夫です。一人で出来ます。」の一点張り。

でも息子をなくした母親に、「メシマズ」とは言えないのは、常識的にチミ達にもわかるね。

よろしい。

あれコップが空だなー

まだ一本か…

ニ本目に行こうか。

グッグッグ…

プハー

やっぱこれやな…

あー続きな

時は流れて数年前…

え?急すぎ?

話に付いてこいよ。笑

Nの妹が死んだのよ。妹っていっても30代だよ。

その葬式に呼ばれたわけ。

飯はうまかったよ。

Nはなんもせずに黙って目つぶってたな。なんだかソワソワしてるようにも見えたけど、別段気にしなかった。

お通夜も終わって、火葬場に着いて焼終わるまで、親戚とべちゃくったんやけど、Nも含め、皆ソワソワしてるんだ。

焼き終わった後、骨壺に収め終わったときに

「じゃー子供はみんなNん家、大人はKん家に行くようにー」っていうわけよ。

俺はタダ酒が飲めるな、なんて不謹慎なことを思ってしまったんだ、すまん。笑

お前に謝ってもな。笑

うんでKん家に着くと、大人皆仏壇の前に正座してるわけ。

嫁いで来た人や、俺みたいに大人になって葬式に初めて参加した人もみよう見真似で正座してると、本家の長老的なじーさんが

「では」

とかいって焼きたてホヤホヤの遺骨を骨壺からだして、木槌みたいなもんで粉々にしてんの。

「ほれ」

手のひらに差し出されたのは、まぁー言うまでもなく遺骨粉末Ver.笑

みんなに行き渡ると

「では」

とかいって口に含んでんの。

な、酒のさかなにはならんやろ。

周りの人は結構うまそうに食ってんの、オヤジもな。

Nなんかベロベロ舐めてんの。なんていうの恍惚とした表情っていうかな。

熟女のエロさを感じたな、うん。

おいおいひくなよ。

うんでな

俺も舐めてみたわけ

俺、知ってたんだ。その味。なんども食べてたんだ。

よくよく子供のころ思い出したら、Nの料理を周りの大人はなんの文句も言わず食べてたんだ。

葬式だからだと思ってたんだ。葬式だからNの料理に文句言わないんだって。

後々聞いたら、元々その地方には遺骨の一部を`食べる習慣があったんやて。

体に取り込むことで、死んだ人と魂を共有するみたいな。

あ、そうそう。

俺ん家って、隠れキリシタンなんよ。笑

隠れてない?

ツッコまれると思った。笑

あんな、キリスト教と隠れキリスト教はもう別モンなんよ。

隠れる必要もなくなったけど、何百年も神父や牧師がいなかったし、その間に『隠れキリスト教』が確立してしまったんよ。本末転倒?その通りやな。笑

あ、うんでな、キリスト教のミサの中でパンとブドウ酒を聖別して、キリストの体と血として、食べる儀式があるやろ。

二百年もたって変わってしまったんやろな。

そう、今の俺んとこの葬式みたいにな。

あ、でもな…

…いや、なんでもない。

いや気にすんな。

はぁー………

…聞くか?

…そか、分かった分かった。

キリスト教は元々土葬や。

火葬になったのは文明開化してからや。

もういいやろ。

は?

わからんの。

死んだ人、切り身にして食ってたんよ。

あー吐くならトイレ行け。飲み過ぎや。

違う?そやな。笑

で、話は戻って俺の話な。

子供には直接遺骨を食べさせずらいから、料理に混ぜてたんやて。

そりゃメシマズやろ。笑

おかしい思わんか。

Nん家はメシマズで有名やったんや、年がら年中メシマズや。

足りんやろ。

え?わかれや。

骨や骨。

正月にお年玉貰いに行く時、お盆の時、法事の時…

葬式の時なんて、何十人前ばい?田舎やからな。

しかも

お通夜の時もメシマズやぞ。

おかしいやろおかしいやろ。

多分旦那の骨も使ってるやろ。でも足りんやろ。

おかしいやろおかしいやろ。

俺、警察に言ったんだ。

「人食べちまった。骨食べちまった。毎回メシがマズい。」ってさ。笑

意味不明やろ。笑

最初は取り合ってくれんかったんやけど、俺の必死さに押されてNん家の家宅捜索っちゅうんかな、まぁーあやしいもんはないか探してくれたわけ。

でるわでるわ。

猫骨も犬骨も猪骨も。

調味料棚に、砂糖、塩、骨ってな具合さ。笑

人?

あったってよ。

誰のかは分かんなかったんだ。

俺、誰食ってたんやろ。

俺、何人食ってたんやろ。

Nはな、墓荒らして骨を調達してたみないなんや。

そこら一帯の墓は、すっからかんやったらしい。

まぁーそんだけ食えばな。

結局その罪でNはつかまったんやけど、警察も予想だにせんことば言い出したんよ。

「次男と三男を殺した。」

話によれば、長男は本当に事故やったんやけど、そんときの長男の遺骨食べて思ったんやて。

「うまい。」

もう狂ってたんやろなー。

長男の味が忘れられんで、長男が死んだ時のように、二十歳になった時に殺したんやて。

もう手羽先食えんやろ。俺は本当に食えんからな。ケンタッキーなんてもっての他やな。

なんつっても人が一番怖いっちゅー話や。この一件で、葬式の時のあの儀式は禁止になって、俺はなんや一族の風習を汚した、お前は一族の面汚しやってゆうて絶縁宣言されてしもうた。あの怒りっぷりからして、オヤジも人骨の味が好………

ブーブー

…うわ。え。

かーちゃんや。

二年振りやな…

ちょっとごめんな。

…なんやの

え、じーちゃんが…

分かった。

俺帰ってもいいんか。

うん

うん

分かった。

明日にも帰るわ。

じゃ。

タイミングって怖いな。

あー田舎に帰らな。

明日朝一の新幹線で帰るから、部長にいっとって。笑

大丈夫大丈夫、貸しあるし、すぐ電話するから……………

『ただいま。』

「おかえり。遅かったわね。ご飯はもう食べた?」

『まだ』

「食べんね」

「どうね」

『…マズっ』

怖い話投稿:ホラーテラー 匿タイ製さん  

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