その日Wは、先生に言われて体育倉庫の整理をしていた。
「何で俺なんだよ....」
Wはその日、同じクラスの友人達と近くのゲームセンターへ遊びに行く予定だった。
(美人先生に頼まれたから、ついついOKしちゃったけど、やっぱ断っとくべきだったな.....)
後悔先に立たず。Wはため息をつきながら、体育倉庫の整理を続けた。
体育倉庫の中は埃っぽく、じめじめしていて、ずっと居ると気分が悪くなりそうだった。
「これは処分、これは.....処分でいっか。さっさと終わらせてこんな所早くでよう。」
Wは一所懸命に体育倉庫の整理を続けた。
「これで最後か......」
Wはぼろぼろになったスコアボードを、処分する物の場所へ運んだ。
「やっと終わったー!俺超頑張ったな、後は先生に報告にしてさっさとかえ............あれ?」
体育倉庫の中の物を全て整理し終えたはずが、倉庫の隅の方に何かが置いてある。
「何だ?............あれ?」
それは一瞬サーフボードに見えた。
「かが...み?」
それは、大人の背丈ほどある、大きな木の枠の鏡だった。
「こんなのあったか?...........」
気づかなかっただけか?とWは思ったが、こんな大きな鏡気づかないわけなかった。それに、体育用具が所狭しとあったこの倉庫の中で、自分の身の丈より大きいこの鏡を置いておけるスペースなんてなかった。
「なんで鏡が体育倉庫の中にあるんだ?というか、これ、いつからあった?」
Wが色々と考えていると、
「おーい、Wくーん。いるものといらない物わけてくれたー?」
Wに倉庫の整理を頼んだ美人先生が、Wのことを呼んだ。
「あ、先生ー何か変な鏡があるんですけどー」
「鏡ー?」
美人先生が倉庫の中にやってきた。
「W君、鏡って何の事?」
「これです、先生...えっ?」
さっきまであった鏡は、いつの間にか跡形も無く消えていた。
「?何言ってるの、鏡なんて何処にもないじゃない。」
「あれ?さっきまでここにあったんですけど.........」
「まあ、いいわ。とにかく体育倉庫の整理してくれてありがとう。もう帰っていいわよ。」
「あっ、はい.......」
とりあえずWは先生にあいさつし、体育倉庫をあとにした。
外の空気は清清しく、気持ちがよかった。が、Wの気持ちには、大きなモヤが残っていた。
(確かに鏡はあったはず、突然鏡は消えてなくなった。...........一体なんだったんだ。)
Wはなけなしの頭脳をフル回転させたが、結局何も分からなかった。
(これ以上考えても意味無いな。)
Wは考えるのやめ、いつもどうり家に帰った。
(これってもしかして、つけられてる?)
その日、Wは一日中ずっと誰かの視線を感じていた。
気のせいだと思っていたが、今、おそらくその視線の主が、Wの後をつけてきている。
(ストーカー!?俺のファン!?なわけねぇよなー)
Wがそんなくだらない事を考えてる間にも、誰かがずっとつけてきている。
Wが歩いているペースとまったく一緒のペースで歩いている。Wが止まればそいつも止まる。
だが、Wの家がだんだん近づいてくると、そいつの気配もだんだん離れていき、Wが家にたどり着くと、その気配は完全に消えた。
(たまたま方向が一緒だっただけか?........)
気持ち悪りぃ。最初はそんなふうにしか思わなかった。
だが、その日から毎日そいつはWの後をつけてきた。
あくる日もあくる日もそいつはWに視線を浴びせ、後をつけてきた。
ただひとつだけ、最初と違うことがあった。
だんだんだんだん、そいつが近づいてくる。
(これは、本当に、ス、ストーカーだ!)
Wは、いよいよやばい、と思い、母親に相談してみた。
「.........で、毎日誰かが後をつけてくるんだよ。」
「うーん........あんた、誰かの恨みでもかうような事したんじゃないの?」
「えー!んー.......俺そんな悪い事したかな?」
「あんた、そいつの姿見たの?」
「えっ!いや...恐くて.....」
「それなら、まだストーカーって決まった訳じゃないでしょ。もしかしたら、あんたの事好きな人かも」
「それならいいけど.........」
Wは次の日、そいつの姿を確かめる事にした。
下校途中、いつものようにそいつはついてきた。
最初の日よりも、かなりそいつが近づいているのが分かる。
(この距離なら、振り返ればすぐ誰だか分かるぞ.........後は、勇気だけ。勇気だけ。)
Wはそう自分に言い聞かせた。
だけど、もし、本当にストーカーだったら........嫌な想像が頭をよぎる。
(根性をだせ!!俺!!よしっ!振り返るぞ!)
「誰だ!!ずっと俺のことつけてくるの!!」
Wは、怒鳴りながらふりかえった。
「うっうわーーー!!!」
Wは悲鳴を上げた。
そこにいたのは、全身真っ黒の人。いや、人かどうかも分からない。それはまるで、人のシルエットをそのまま切り取ったように、厚みというものが感じられなかった。顔にある目と口だけは、はっきり見える。
「な、なんだよこれ..........」
Wは逃げようとしたが、足がすくんで全く動けなかった。
汗が一気に噴出してきた。体が小刻みに震えている。
「...........見たね。」
「....えっ?」
「見たね、見たね見たね見たね見たね見たね見たね見たね.........」
そいつはにやにや笑い、目ををきょろきょろと動かしながら、そう繰り返した。
「うわーーー!!!」
そこでようやく足がいう事を聞くようになり、Wは家に向かって、一目散に走り出した。
(なっ何だよあれ、人じゃねぇ!!)
Wは走りながら後ろを振り返った。
そいつはにやにや笑いながら、歩いてついてきていた。
(振り返るんじゃなかった!)
Wはやっとの思いで家にたどり着いた。
「お母さん!!!」
「あら、お帰り。あんた、ちゃんと見てきた...........」
「見たよ!!!やばい!!」
「えっ!まさか本当に不審者だったの?ストーカーだったの!?」
「違う!もっとやばい奴!!」
Wは見たまんまのそいつの姿を母親に話した。
すみません。時間が無いので続きます。
怖い話投稿:ホラーテラー 青二才さん
作者怖話