僕は僕の前に立っている。
僕の前にいる僕は僕が誰だか判らない。
それは当然か。
産まれて間もないのだから。
僕の前に小人(?)が現れたのは数時間前。
「私は悪魔、以下省略」
「僕の両親はどんな人だったんだろう。一目でいいから会いたい。そうだ!僕に、過去にいける超能力を下さい!」
悪魔はしばし沈黙した後、こくりと頷くとスッと消えた。
さっそく試しに10分前に
悪魔と話す僕を物影から確認すると、一気に自分の出生時にジャンプする。
・・・お母さんは優しそうな人だった。
が、僕を産んで直ぐに亡くなった。
お父さんの姿はそこには
なかった。
お父さんはもともといなかったんだ。
僕はそう気づき、咄嗟に目の前で眠る僕を抱きかかえ街へ走る。
街外れの教会に着くと「名前はジロウです。」とメモをバスケットに入れ僕をそっとおく。
これでいいんだ。
ここから僕の人生はスタートするんだ。
よし、どうせならもう少し昔も覗いてみよう。
そしてさらに50年前の過去へ
ここで初めて重大なミスに気づく。
未来への帰り方がワカラナイ。
いや、帰り方なんてないんだ。
悪魔への願いは「過去にいける超能力」
私は神父になり、12歳の私が産まれたばかりの私を教会の前に置いていくのをそっと見ていた。
バスケットの中で人生をスタートしたばかりの赤子の私は、人生を終えようとしている私を見るとにこりと微笑んだ。
そして私は、今日も深々と懺悔するのだった。
怖い話投稿:ホラーテラー ジロウさん
作者怖話
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