続きです。
「お前、おかしいよ...........」
「......!!」
ショックだった。
こうなる事を、Wは薄々分かっていた。
見えない物を信じろって言ったって、信じられるわけ無い。
分かっていたはずだった。
それでも、Wは、親友であるTにはこの事を話しておきたかった。
そして、出来ることなら、信じてもらいたかった。
だが、その望みも儚く散った。
(分かってたろ、こうなるって。分かってたはずだろ!............くっ!)
こみ上げる気持ちを抑えきれず、Wは、走り去った。
「あっちょっと!!W!」
Tは、Wに一体何が起こったのか検討がつかず、ただただ、呆然とその場に立ち尽くすだけだった。
その日からWは、学校へ行かなくなった。
外に出る事もほとんど無くなった。
母親から、なぜ学校に行かないのか、Wは尋ねられたが、答える事が出来なかった。
俺が、黒い謎の人のような物に追いかけられてる事を、誰も信じてくれないから。
なんて言ったら、どんな顔をされるだろうか。
親も親友も、誰も信じてくれない。
信じる事が出来ないのだ。
現に、Wの母親と親友のTは、Wに何かよくない事が起きているのは分かっていた。
だがそれが、Wの言うように、謎の黒い人のような物によるものだという事は、にわかには信じられなかった。
あいつは俺にしか見えないんだ.............
誰も頼れないないんだ..............
Wは、あいつをどうにかする事を諦めていた。
我慢していつもどうりの生活を送ろうとも考えた。
だが、あいつのまとわりつく視線、何処に行くにもあいつとずっと一緒。
Wには耐えられなかった。
(もういい。俺はこのまま家の中で暮らす。あいつに会わないよう、生きていくしかないんだ。)
家の中は、唯一安心出来る場所だった。
あいつは何故かは分からないが、家の中に入ってくる事は無かった。
Wは少しの間、あいつにつきまとわれる事の無い日々を過ごした。
「W、ちょっと来て。」
「えっ?」
その日の朝、Wは突然母親に呼ばれた。
「何?」
「何で、学校に行かないの?」
「................」
「どうして、言ってくれないの?言えないような理由なの?」
「..............違う。」
「じゃあ何で?」
「言ったって........信じないだろ。」
「何が?」
「外に出るとあいつが居るんだ。前も言ったじゃないか。学校へ行ってもあいつはついてくるんだ。.............親友のTに話しても、信じてくれなかった..........お母さんは、信じてくれるの。」
「..........居るわけ無いでしょ、そんな......」
「居るわけない!!?気づいてないだけだろ!!俺の辛さがわかるか!あいつにつきまとわれて、誰にも信じてもらえなくて..........それなのに居るわけないでしょなんてよく言え.........」
「嘘をつくのはもうやめて!」
「...........へ?」
「あなた、学校でいじめられてるんでしょ?ねぇ、そうなんでしょ!?」
「........何言って..........」
「いじめられて、学校に行きたくないからそんな嘘つくんでしょ!?辛い事があったら、隠さず話してみなさいよ!...........私達、家族でしょ?」
母親は、Wがいじめられて学校に行きたくないから嘘をついているのだと思っているようだった。
(俺が...........嘘をついてる?本当の事を言ってるのに...............嘘をついてると思われてる?)
Wの心はずたずたになった。
「何で.............」
ぽろぽろと、涙が零れ落ちた。
すみません、また続きます。
多分次で終わると思いますので、最後まで御付き合いください。
怖い話投稿:ホラーテラー 青二才さん
作者怖話