短編2
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何もできなかった

パチンコを知らない方、18歳未満の方には全く意味不明の内容になっている。とばして下さい。

暇なので、久しぶりにパチ屋に行ってきた。

5/5 晴れ 11:30頃…ホールに到着し、店内を物色。甘デジ山物語(仮名)にそこそこ空き台を見つけ、釘チェック。予想通りのGW大回収調整に溜め息1つ、

「くっ、ヘソも風車周りもイジメすぎだぜ。1万だ、1万だけ打って、帰ってホラテラ見よう」

投資1万3千円目、初当たりが運良く7連チャン。持ち玉遊戯をしながら、ポツポツとかわいい連チャンをひき時間を潰す。

「おい、ラム(仮名)が出たぞぉ~!」

懐かしい大声がシマ内に響く。『ラムおじさん』も元気そうでなによりだ。

可もなく不可もなく遊戯を続けていると、

「カタカタカタガタガタガタ……」と何かが揺れる音が聞こえ、俺は周囲に目をやった。斜め後ろの、30代くらいの青年が痙攣を起こしている。

「バキッ、バッターン、ガシャーン、ゴロゴロゴロ…」

青年は座椅子をへし折り、痙攣しながらぶっ倒れた。周囲のドル箱はひっくり返り、銀玉がシマ内に散乱する。痙攣を続ける青年と目が合った。

「てんか…んてんか…きゅきゅしゃっ…」

??、青年が泡をふきながらブツブツ言っている。

「おーい、救急車呼んでくれー」

ビビりまくっている俺をよそに、おっちゃんおばちゃん、爺さま婆さま連中はいたって冷静で、おっちゃんが店員に指示を出した。

「大丈夫大丈夫、玉拾って遊ぼう。あーもう集まんな集まんな」なんなんだ?この落ち着きようは。

程なく救急車到着。青年は、担架に乗せられている最中にボソボソ呟いた。

「じた…ちゅう…じた…ん」

青年を乗せた救急車はホールをあとにした。

店員が無表情で、青年が打っていた台を開け、時短中の台の電源は落とされた。再び台の電源が入り、山物語のデモ画面が空しく表示された。

「鬼や!この前のコンビニ店長といい、この店員といいどうなってやがる」

俺は、青年に何の手助けもできなかった自分への情けなさと、無表情で去って行った店員に対する憤りで気分が悪くなり、1箱半の出玉を流し稼働を終了した。外に出て空を見上げ、先程の出来事を思い返した。

救急車なら携帯で直ぐに呼べたはず。落ち着け、と自分に言い聞かせた。見上げた空が、俺の心の中を映し出しているようだった。

5/5 曇り 17:10

収支-5200円

怖い話投稿:ホラーテラー ガッツいちもつさん  

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