中学3年の秋。
部活も引退してほとんどの生徒は地元の馬鹿高に進学が決まっていたので皆受験勉強ってなにそれオイシイノ?状態だった。
数人の生徒が暇を持て余して放課後の学校にたまっているのはいつものこと。
そりゃ私たちもどっか遊びに行きたかったんだけどね。なにせマックやゲーセンはおろかまともなカラオケなんてスナックにしか無いような田舎町なんだ。
そんなこんなで毎日のように仲のいいグループで暗くなるまで教室でしゃべっては時間を潰していた。
その日は元野球部のY、K、帰宅部のE、私の4人が残っていた。
放課後、だいぶ暗くなってきたし、そろそろ帰るか?なんて話をしていると、廊下からパタパタと足音がしてきた。
Y「あれ?まだ誰か残ってんのか?」
K「いや、この階の教室はさっき通ったらもう誰もいなかったけど?」
じゃあ先生か用務員のおじさんだろうということになり、ぼちぼちみんながかばんを手に取り帰り仕度をはじめたころ
E「ひぃ・・・!!」
突然Eがドアのほうを見たまま硬直した。
皆が一斉にドアに視線を走らせる。
顔だ。
眼鏡をかけたセンター分けの30代。無感情な視線でまっすぐに私たちの方を見つめている。
Yが口を開いた。「メガネさんかよ!!びびらせんなよ」
臆病なEは既に腰が抜けているようだ。必死で机につかまってバランスをとっていた。
ああ、メガネさんの説明を忘れていた。
メガネさんとは私たちの学校の事務の人で、もう10年以上この学校に勤めている。
ただ彼はかなり変わっていて、気に入った生徒を見つけると放送室に連れ込んでは、「浜崎あゆみの中学時代の生写真だよ」とか「心霊写真見てみたくない?」などと望んでもいないものを見せつけてくると生徒の間ではかなり逝っちゃってる人と認識されていた。
「なに?なんか用?俺達もう帰るんだけど」
Yが多少いらつきながら尋ねると、メガネさんはなぜか顔を赤を赤らめながら「僕が車出すからさ、これから峠の滝に行ってみない?その後好きなところにドライブ連れてってあげるから」
メガネさんはいつの間にかするりと教室の中に入っちゃっていた。
普段だったら彼の誘いという時点で即断っているが、田舎で行動の限られている中学生の私たちには「自分たちのために自由に動いてくれる車」というのは少なくとも頑固者のYですら悩ませるほど魅力的なものだった。
十分後、私たちはメガネさんの車で滝に向う峠の坂道を上っていた。
長くなったので続きます。
怖い話投稿:ホラーテラー 岬漁業部さん
作者怖話