それからは俺もただ冷静でした。
不法投棄こそ無くなったが深夜一時くらいになるとインターホンがなる。
カメラの画面には女がいて声を出さず、にやりと笑った顔があった。
それから毎日インターホンがなる。
しかし俺が仕事で家を出る時は女はいない。
蹴られるのが怖いのか…
それとも俺を殺す日はもう決まっているのか…
いろんな妄想がよぎるがいい加減慣れた。
慣れと言うものは怖いもので、浮気相手や友人を家に招いては、今日も玄関前で笑顔で佇む女をみんなであざけ笑っていた。
そんな感じで2ヶ月…よく深夜徘徊にも捕まらず毎日来れるなと感心していた頃だった。
ヤクザの息子である後輩が俺の賛成も聞かず女を待ち伏せ半殺しにしたのだ。
正確にはそう聞いた。
外に出ると血がいっぱいあった。
女はいなかった。
それからは女はいなくなった。
半年ぐらい平和だった。
女のことも忘れ、また平凡にヤンチャして暮らしていた。
ある夜深夜一時くらいにインターホンがなった。
女を思い出した。
女が無事だとちょっとだけホッとした。
しかしカメラの画面は白いだけだった。
なら幽霊…?
しかし俺には違和感しかなかった。
暗いのに白いって…
嫌な予感がしてた。
玄関を開けた。
正確にはちょっと開けた。
何かが当たって開けられなかったのだ。
目の前には白い布…
いや…
女だ…
玄関前の屋根のつっぱりに縄をかけて首を吊っているのだ。
狂いそうになりながらも女を抱えて、縄を外して、生死を確認する。
脈もない。
もちろん心臓マッサージをした。
冷静だった。
胃液か血か何か分からない液体が出てきている口にも人工呼吸をした。
どれだけ続けたか分からないが女は死んだ。
茫然としていてその後の記憶は曖昧だったが、通報して警察に事情聴取されて、家帰って仕事休むと連絡し、寝たはずだ。
でもこれだけは、この静止画だけは頭に残っている。
首を吊っている時も俺が何かしてた時も女の顔は…
笑っていた。
幸せそうにも見えて悲しそうにも見えて、どっちかなんては分からないが…
あと首を釣りながらインターホンを押したのか…首を釣る前に押したのか…
後者なら助けられたはず…
それとも…
最悪の形で解決したストーカー事件だった。
俺には首吊り死体の静止画というトラウマが残っただけだ。
女には何か残ったのか…
おわり。
怖い話投稿:ホラーテラー チャラ男さん
作者怖話