これは今でも引っ掛かっていて思い出してはゾッとします。
俺が生まれるずっと前、まだ母が20代の頃のお話です。
当時の母は独り暮らしをしていて、とても貧乏だったそうです。
専門学校の学費の為にバイトしながらだったのでギリギリの生活だったらしいです。
給料日前などは財布には小銭しかないような。
当然、住んでる部屋も酷い所だったみたいです。
押入れは歪んで開かないは風呂はないし、狭いワンルーム。
安さだけが取り柄みたいな部屋。
でも、楽しかったと言っていました。
そんなある給料日前の極貧の時、財布には九百円。
あと3日どうやって食い繋ごうか考えながらスーパーに行き買い物をして帰ってきてびっくりして意味が解らなかった。
買ってきた物は粉ミルクとおしゃぶりでした。
まったく買った記憶がない。
買った証拠のように財布にはお金がない。
いくら考えても解らない。あと九百円で3日と考えてるのに、そんな物を買う訳がない。
とりあえずバイトの時間だったので気にしつつ出掛けました。
バイト先の友人にお金を借りてやり過ごしたそうです。
そして粉ミルクやおしゃぶりを忘れかけたある日、夢を見ました。
自分の部屋で寝ていると歪んで開かない押入れがガタガタと音がする。
気になり開けようと手をかけた時に目が覚め、そのまま金縛り。
夢か現実か解らない。体が動かない。
夢と同じく押入れがガタガタと動いている。
怖いというより、なんで?のほうが強く見たい衝動に駆られ必死に金縛りを解こうともがいてるうちに寝てしまいました。
また夢を見ました。
続きのように夢の中でも押入れがガタガタと揺れている。
押入れに近付き思い切り開けた。
中には木の箱があり開けて見ました。
開けると中には、お雛様の右大臣が入っていてゆっくりこっちを見上げ狂ったように笑いだしました。
そして、笑いながらお前の子供は16の誕生日を越えられない生きられない。。
生きられない
越えられない
生きられない
越えさせない
そこで恐怖で目が覚めました。
怖くて仕方がなかったが明るくなるまで待ち押入れを無理矢理あけて確認しました。
中には風呂敷に包まれた哺乳瓶やカラカラと鳴る玩具が何個か入っていて、その横には前に買った粉ミルクとおしゃぶりがありました。
なんで?いままで開けた事なかったのに。
いつ入れた?自分で入れた?
入れた記憶は絶対にない。
それに、粉ミルクとおしゃぶりは自分で買った物だけど、風呂敷は解らない。
前の住人の物だと思い大家さんを尋ねました。
大家さんは前に住んでた人は妊婦さんで、その方の両親が急にそこを引き払い出て行ったみたいな事を言っていました。
妊婦という言葉に寒気を感じ風呂敷を大家に見せると固まっていました。
さすがに、そこには住んで居られないので借金して引っ越しました。
月日が流れ母が妊娠に気付いた時、あの時の右大臣の事を思い出しましたが、夢だったと思う事にして忘れるように努めました。
そして俺が生まれました。まぁたまに不思議な事がありましたが、普通だったと思います。
明日が誕生日という時に母から今の話しを病院のベッドの上で聞きました。
前の日に、つまり誕生日の2日前に車に轢かれ入院してました。
先生は、かなり派手に轢かれたのに打撲と右足の骨折だけで済んだのは奇跡だと言ってました。
母の話しだと死ぬのかなと思いかなりビビってたけど何事もなく病院のベッドの上で16の誕生日を迎えました。
その時の母は泣きながら良かった、生きててと言ってました。
一番怖がっていたのは母でした。
俺が16になるまで、この事を考えない日はなかったみたいです。
そんなに心配してくれていたんだと母に感謝の気持ちでいっぱいでした。
ただ、暫くは本当に終わったのか不安でした。
けっこう前の事ですが未だに怖いです。
怖い話投稿:ホラーテラー 鍵仁さん
作者怖話